2023年4月から、地球環境基金の助成を受け活動しているめぐる布市「出口を広げるプロジェクト」。その活動の一環で、昨年より年に2回、他団体への視察を行う機会を得ました。
現場スタッフは日々終わりのない作業に追われ、なかなか外を見る機会がなかったため、新たな視点を得たり、アイデアが膨らんだりと、非常に学びの多い良い時間となっています。
今年7月、かねてからいつか訪れたいと思っていた、長野県諏訪市にあるリビルディングセンタージャパンへと視察の旅に行きました。
めぐる布市は、2020年の6月にスタートしました。
前身のアップサイクル工房「AppliQué」は2017年からスタートしていたものの、寄付頂く物量に対応するだけの売上をつくることのできる商品を開発するのに苦労しており、今後この状態で継続していくのか、形を変えるのか、はたまたやめるのか、進退をみんなで話し合った時期でした。
その時に、参考になる事例はないかとさまざまな方面に目を向けていた中で、長野県のリビルディングセンタージャパンの存在を知りました。
私たちが、アップサイクルした商品ではなく、新たな使い手につなぐ役目を担う立場として素材そのものを扱おう、という視点にシフトしたのも、このリビルディングセンター(以下リビセン)の存在がとても大きかったように思います。
そのリビセンとは、役目を終えた古材や家具、建具などをレスキューして、次に使う人へと販売する、建築建材のリサイクルショップです。
アメリカのオレゴン州ポートランドにあるNPO ReBuilding Center の日本版として、2016年に諏訪市に設立されました。
訪れて、まず驚いたのは、店舗面積が非常に広いこと。元々建設会社の旧本社ビルだったとのことで、天井も高く、あれだけの物量が並んでいるとは思えないほど空間にゆとりを感じました。
カフェから古材置き場が一望できるという、非常に心躍る眺めだったのですが、これも、物件選びの時から、古材を見ながらくつろげるカフェを作れる場所、という思いがあったとのこと。
古材を目にすることで、今自分が腰掛けている椅子やくつろいでいるテーブルの素材にも思いを巡らせることができます。
これも売れるの?と思ってしまうほど使い込まれた金具や釘、懐かしいハンガーがあったり。
ニカワは溶かして使ったり、釘も再利用するのだとか。
一通りお店を物色した後お話を伺ったのは、取締役であり、企画運営や広報などを担当している東野華南子さん。
以前は、ご夫婦で空間デザインユニットとして活動をし、ポートランドに行った際に現地の様子に感銘を受け、クラウドファンディングで資金調達をして、このリビセンを立ち上げたのだそう。
「時代や暮らしの変化の中で、役目を終えた建物から家具や建具、木材などをレスキューすることで時代が育ててくれた古くて美しいものを次の世代につなげていきたい」と話す華南子さん。
内容や規模は違えど、捨てられてしまうものたちを誰かにつなぐためにレスキューする、という気持ちは同じです。
そして、普段レスキューしている立場だからこそ、この空間から見えるものがある。
この大きさもさまざま、素材もバラバラなものたちが、整然と美しく並んでいるさまに、裏方の丁寧なお仕事を垣間見ることができました。
そして、目線の先にはさまざまなPOPやチラシ、案内板がありました。
そこには、リビセンのお仕事のこと、レスキューの流れのこと、引き取るもの、引き取れないものの基準のこと、活動を支える人たちのこと、レスキューさせていただいた持ち主の方のお話。どんな場所でどんな風にレスキューされたかを知ることで、それらを使いつなぐことにより思いを馳せることができる。
見ればわかるとか、わかる人に伝わればいい、ではなく、ちゃんと興味を持って知ってもらうため、活動の意図や活動への理解、素材の価値を伝えようという丁寧な仕事がそこかしこに見受けられました。
だからこそ、諏訪という決して交通の便の良い場所ではないところに県外からもいつもお客さんが訪れる、という状況ができているのだなあと思いました。
スタッフたちの疑問の一つに、引き取りでものが溢れてしまうということがないのか、というものがありました。
めぐる布市では、引き取りに一応基準はあるものの、販売に繋がらないもの、めぐりのスピードが遅いもので倉庫が溢れてしまっている状況があります。
しかし、そこはレスキュー担当のスタッフが、人力で手に負えるもの、使い方を提案できるもの、という基準を見定め、活かしきることができないものに関してはその場でお断りをしているそう。
そういう基準がきちんとでき実行できている、という部分も見習いたいところでした。
そして、リユースだから安いのが当たり前、という一般的な概念ではなく、それらにさらにデザイン性を加え新たな付加価値を加えた商品としての販売など、本当に必要なものとして活かすための工夫がそこかしこにありました。
そのままで使えるものもあれば、現代の生活には合わないものもある。
ものをじっくり見極め、ものの背景を感じ、そのものの美しさに光を当てることで、新しいものが生み出されることも。
雑多なように見えて、ありとあらゆる古いパーツなども整然と並ぶさまに、それらを楽しむ人を作りたい、という気概を感じました。
実際にボランティアとして活動に参加できるサポーター制度や、リビセンを自分の地域でやりたい人のためのスクールなど、資源の回収や再利用に興味があり、自分の地域で取り組みたいという人たちの後押しをするという仕組みも出来上がっています。
一歩も2歩も先を行く場所でしたが、でも、きっと私たちにも私たちのやり方でできることがある、と刺激を受け、やる気を鼓舞されたような時間となりました。
この1日で得られたものを、少しずつ、できることから生かしていきたいと思います。
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リビルディングセンタージャパン
【この活動は、地球環境基金の助成を受けています】