project -出口をひろげる-

めぐる布市・出口を広げるプロジェクト2024レポート|不登校のための学びの場所COMETセミナー(横浜市緑区)

横浜市緑区十日市場町にある[不登校のための学びの場所 COMETセミナー]です。2023年の11月に「自分のペースで、自分らしく学べる」ことをモットーに開室したフリースクールです。

そして今年度、めぐる布市さんの「出口を広げるプロジェクト」に参加させていただきました。

参加した理由は大きく二つありました。

 

「毛糸と枝でオブジェを作るよ」とお話をしたら、近所の公園や林から子どもたちが枝をたっぷりと拾って持って来てくれました。毛糸や枝の手触りも楽しかったです。

 

一つ目は「めぐる布市」さんの「めぐる」というコンセプトに共感し、惹かれたことです。

地域の中のめぐり、広く見ると、この地球の中でのめぐりの中に私たちがいることを、このプロジェクトに参加することで、COMETセミナーに通っている子どもたちや保護者の方々に体感してもらえるきっかけになればと思いました。

不登校になると、多くの保護者も子どもが最初に感じるのは、拠り所のなさです。

学校という居場所から離れたとき、お家の中にいる子どもたちもそれを見守る保護者も、ふと、どこにも自分がつながっていないような、ポツンと取り残されているような、不安と孤独を感じてしまう場合があります。

学校以外に、地域や、さらには世界の中にはもしかしたら、今こうしている間もつながっているところ、そしてこれからつながれる場所があるかもしれないと、少し角度を変えて見ることのできるような出会いがあることを感じてもらえるきっかけがあればという願いがありました。

中学2年生と小学5年生、お互いのアイディアや作品を「わあ、それいいね!」と認め合いながら、それぞれの好みや工夫によって世界で一つの作品が仕上がっていく。

 

会ったことのない方々が思いを寄せて寄付された布たちを、めぐる布市のスタッフさんの手が受け取り整え、そして今回、私たちが「こんな活動に使ってみたい」という希望を一つ一つ読み、思いを巡らせて素材を丁寧に選び、教室へ送ってくれました。そして、それを子どもたちの手が受け取ることができました。

このめぐりは、暮らしの中で、今、目の前にあることや、目の前にいる人以外の思いや善意を受け取り、託されていることを感じる大切なきっかけとなりました。

誰ともつながっていないなんていうことはない、大きなめぐりの中に一人一人がいるのだという言葉なき、ぬくもりのあるメッセージとなりました。

思いもかけない素材の組み合わせを大胆にする男の子たちの作品は見ている方もワクワクします。この作品は妹へのプレゼントでした。お迎えにきた妹が嬉しそうに手に提げて帰る様子が微笑ましかったです。

 

二つ目は、ものづくりを大切に考えているCOMETセミナーの活動にとって、少しでも使うことのできる素材をいただけるのであれば大変助かるということでした。

素材というところでは、実は最初に少し難しい場面もありました。

COMETセミナーは本格的に始動してからまだ1年が経っていませんでしたので、スタッフも手探りの挑戦をしている真っ只中でもありました。

その中での今回のプロジェクトの参加は期待と同時に分けていただいた素材を目の前にした時、さてCOMETセミナーが活かしきれるだろうかという不安が湧きました。

というのは、思えば、私たちが手にしたことのある布や手芸用品というのは今まで新品しかありませんでした。

そしてまた、自分が好んで選んだ布や毛糸で作品を作ったことばかりでした。

けれども、当然のことですが、寄付でいただいた布というのは真新しいというものとは限りません。

ときには布に経年によるシミがあるものがあるものや、自分では選ばない柄物や色も含まれています。

 

「家族へのプレゼントにする!」と作品を作る子も多いです。作品がお家に飾られることを思うと暖かな気持ちになります。

 

送っていただいたたくさんの素材を眺めながら、ワクワクする気持ちと同時に、せっかくいただいたのに、使いきれないかも、使いこなせないかも、という心配が湧き上がりました。

子どもたちにどんな風にこの素材を手渡し、どのように新しい作品を生み出してもらうか、それが子どもたちにとって、リユースというサイクルとの最初の出会いだとしたら、良い時間を過ごしてほしい、いろいろな思いが渦巻いていました。

この不安を伝えて良いものか迷いましたが、思い切って布市の事務局に、相談することにしました。

COMETセミナーの姉妹教室「放課後等デイサービス星の広場」にもおすそ分けさせていただきました。星の広場でも布や毛糸は大活躍でした。写真はお正月飾りです。布を細長くピンキングはさみで切り、円形のワイヤーにくくりつけ、最後に縁起物を飾り付けています。布の柄を植物で統一したり、色の組み合わせを考えたりしていました。

 

すると、事務局の皆さんが相談に乗ってくれました。

COMETセミナーも一度どのような場所なのか見たいと言っていただき、教室で実際に布や手芸用品を前にアドバイスをいただく時間をとっていただくことができたのです。

これは本当にありがたかったです。

まずは、古布に対する扱いに慣れているというところが私たちとは全然違いました。

古布とはそういうもの、という目線で布を前にしていると自由な発想になることが分かりました。

例えば、「あ、シミがあるなあ」と思った布も、布市のスタッフさんは「ここを切ってしまえば、こっちは使えるね」と軽やかに言って使えるものとしての見方を教えてくれます。

また、一枚として見るというより、そこからさらに柄の部分だけ切り抜いてみたり、割いてみたり、刻んでみたりと、

アドバイスをもらっているうちに、古布だからこそのびのびと使ってしまえるのだな!と心がどんどん軽くなりました。

「自由に使ってね」と、素材をテーブルに置いておいたら、折り紙とビーズ、そしてフェルトを組み合わせてオーナメントを作っていました。子どもの発想にいつもびっくり!

 

そして何より、スタッフの方々の柔軟な雰囲気にこちらの緊張も解けて、それこそ「めぐり」が良くなって行くのを体感するのでした。

ここにあるものだけでなく、子どもたちの家庭に眠っている布たちも持ってきてもらっても良いのでは?というアドバイスもとても貴重なものとなりました。

 

そのような時間を経て、ご家庭には布市の出口を広げるプロジェクトに参加していることをお伝えし、布や手芸用品の寄付を呼びかけてみました。

お母さんたちはまず、「布市」の可愛いハガキを手にして「私、そういえば手芸とか大好きだったんです!久しぶりに思い出しました。今度娘と布市、行ってみようかな」と笑顔になってくれました。

「きっかけ」、特に新しい場所や新しい興味との出会いは不登校の子どもやご家庭にはとても大事なものだと思っているので、もうその時点で、このプロジェクトに参加してよかったとさえ思えました。

また、布を持って来てくれたお母さんは「幼稚園のバックを作った布の余りで、いつか使おうって思ってとっておいたけれど、いつの間にか中学2年生になってた!もうさすがにこんなに可愛い柄で何かを作ることもないなって、今回のきっかけで布を整理して思って。なんだか子ども成長を感じてしまいました」と懐かしそうに布を見ながら話してくれました。

ものづくりをしている子どもたちの手は見ていて飽きません。

 

さて、布市のスタッフさんにアドバイスをもらったり、スタッフ内でアイディアを集めたり、保護者の方の寄付も合わせたりと準備が整い、秋からいよいよいただいた素材をメインにものづくりの活動を始めました。

始めてみると、「少し地味な色が多いかな」「見たこともない柄かな」などというこちらのかすかな不安をよそに、

「この色素敵!」「この触り心地面白い」「わ!こんなに毛糸がある!」など、子どもたちはそれをリユースということさえ軽々と飛び越えて新しい素材との出会いとしてすんなりと受け止めていくのでした。

プロジェクトのことも伝えながら活動をすることで、一度は人の手を離れたものが、みんなの手の中で形になっていくことの不思議さ、素敵さを体感してもらえたと思います。

 

ガーランドにも、それぞれ思いがけない工夫が。いただいた素材の中でも、みんなが「お宝発見!」と飛びついていたヒヨコの鈴がここで活かされるとは!

 

ものづくりをするときの子どもたちの目の力や、手のしなやかさはこの仕事をしているなかでも特に心を掴まれるものです。

布や毛糸、素材を前に、子どもたちは自分の作りたいもののイメージを膨らませて、自分の感覚を頼りに、それらを選びます。自分で選ぶということは実は難しい子どももいます。

それは少し自信をなくしているためでもあったり、学校の中では決まった時間の中でこなさなければならないというプレシャーによる習慣によるものである場合もあります。

ですが、ここでは子どもが自分で選ぶことを待つことができます。

作ることも大事ですが、まずは自分が好きなものを自分で選ぶということがものの「すると活動を重ねるごとに、その子は選ぶ時間が短くなっていきました。そして不安そうに素材に手を伸ばしていた最初のころとは見違えるように、積極的に自信を持って選んでいる様子です。

 

 

会ったことのない人とも私たちはきっとどこかで繋がっていて、今日という日を過ごしていることを今回のプロジェクトに参加する中で、布や毛糸と一緒に子どもたちに手渡せていたら嬉しいです

 

活動は続けていくほどに意味が深まっていくと思います。この度、この布市さんの未来を見据えた活動の中に子どもたちと参加することができたことは、子どもたちの胸の内に、つながりやめぐり、そして未来を見つめる種を蒔く時間をいただいたことでした。この種をこれからも継続する活動の中で、育てていくことが私たちの希望です。そしてまた、布市さんの活動も子どもたちとこれからも楽しみにしています。

 

 

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「自分らしく学べる場所 COMETセミナー」

住所 226-0025  横浜市緑区十日市場町805-1 佐藤ビル304

電話 070-3535-9158

HP:https://comet-ss.com/

Instagram: https://www.instagram.com/cometseminar2023/

 

めぐる布市出口を広げるプロジェクト2024

 

〈お問合せ〉

認定特定非営利活動法人 森ノオト

ファクトリー事業部(担当:齋藤)

factory@morinooto.jp

 

【この活動は、地球環境基金の助成を受けています】

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