project -出口をひろげる-

横浜美術大学へ行ってきました! 〜布の可能性を探る視察〜

2023年4月から、地球環境基金の助成を受け活動しているめぐる布市「出口を広げるプロジェクト」。

その活動の一環で、昨年より年に2回、他団体への視察を行っています。

今回は、横浜美術大学を訪れました。

テキスタイルデザインコースの授業や学生の作品、先生方のお話を伺い、想像以上に奥深い世界に驚かされました。布に関わる私たちにとって、大きな学びと新たな可能性を感じる視察となりました。

 

ー学長とのご縁から生まれた視察ー

実は、学長の加藤良次先生 には、今年度「出口プロジェクト」のハギレ活用コンテストで審査員をお願いしており、すでにご縁がありました。

その際に打ち合わせで訪れたスタッフが、加藤先生の案内で美大の様子を見学。

「これは、現場のスタッフにもぜひ見てほしい!」
「きっと何かしらアイデアやインスピレーションにつながるはず!」

そう確信し、今回はスタッフ全員での視察となりました。

美大ではどのような学びがあり、どんなふうに布が使われているのか?
そして、私たちが関われることは何か?

そんな視点を持って訪れてみると、想像以上の発見が待っていました。

ー布を生み出す、テキスタイルデザインコースー

 

 

横浜美術大学の テキスタイルデザインコース では、「布をつくる」ことそのものがゴール。
私たちが普段目にする布は、すでに商品化されたものですが、ここでは 「染める」「織る」「編む」といった工程そのものを学びます。

 

これは、テキスタイルの元になる実際に学生さんが描いた絵

 

手でプリントを施し、生地として生まれ変わっていました

 

布や手芸が好きなスタッフたち。

その布を作り出すという工程には興味津々でした。

ー印象的だったポイントー

 

▶︎染色技法「抜染」

すでに色が入っている布の一部の色を抜くことで、新たな模様を生み出す技法


▶︎スクリーンプリント vs インクジェット
従来のスクリーンプリントに加え、2011年の大学設立時には 1メートル20幅のプリントが可能なインクジェット機 も導入。
しかし、インク代やメンテナンス費用が高額なため、現在は外注が主流に。

 

▶︎学生たちのデザイン手法

  • 手描き → スキャン → PC作業 で仕上げる方法
  • 最初からPCでデザイン
  • 写真からデザインを起こす手法

さまざまな技法が組み合わされ、学生ごとに個性が光る作品が生み出されていました。

 

ー素晴らしい作品の数々、でもその行く先は?ー

 

キャンパス内には、色とりどりの 布地、パターン、織物、染め作品 が並んでいました。

どれも素敵な作品ばかりなのですが、驚いたのは 「卒業制作がそのまま放置され、最終的には廃棄されることがある」という事実。

「これだけのクオリティの布が、使われずに終わるなんてもったいない!」

そこで浮かんできたのは、学生作品の販売や循環の仕組みをつくることができないか、ということ。
布市などで販売する機会を作れば、学生たちも 「売れるデザインとは?」 を考えるきっかけに

なるのではないか。

また、布市で動かないまま眠っている布を学生たちに提供し、新たな作品を生み出してもらうこともできそう。
テーマを決めて素材を提供すれば、授業の一環としても活用できるのでは?

さまざまな可能性を感じました。

ー現代の学生たちの価値観の変化ー

 

先生方のお話の中で、こんな話題が出ました。

「最近の学生は美術館に行かないし、服にもお金をかけたがらない。旅にも出ないし、スマホで完結することが多い。」

さらに、制作する際も 「より良い布を選ぶ」 より 「安い材料で済ませる」 傾向があるとか。
これはコスト面だけでなく、時間や手間のかからない選択をする「タイパ重視」の考え方 にも関係しているそうです。

とはいえ、先生方はそうした学生たちに対しても柔軟に接し、創作の楽しさを伝えようとしているのが印象的でした。

ー現場スタッフにとっても、新たな視点が生まれた時間ー

 

普段、現場のスタッフは 日々終わりのない作業 に追われがち。
そのため、今回の視察は、スタッフにとっても 新しい視点を得る貴重な機会 となりました。

「こういう活用ができるかも?」
「このやり方、布市にも取り入れられそう!」

そんな気づきやアイデアが次々と浮かび、改めて 直接現場を見ることの大切さを実感しました。

 

美大の学生が考案した、古着を再利用したオリジナルファブリック。

ネットに布を押し込み中に生地を入れることで、クッション性のあるポコポコとした形になることから「ポコス」と名付けられました。

 

 

テキスタイル制作の技法の一つ、タフティング。主にカーペットやラグを製作するために使われますが、

ここでは、絵画のように作り込んでいる学生も。

ー今後のコラボレーションの可能性ー

 

今回の視察で、横浜美術大学とのコラボレーションの可能性がいくつも見えてきました。

【学長トークショー】

加藤先生の「布と色」についての話はとても面白く、トークイベントとして開催したら多くの人が興味を持ちそう!

布市 × 学生作品販売

布市に学生たちを招待し、販売体験をしてもらう企画。価格設定などのルールを整えれば、実現可能性は高い。

出口プロジェクトの活用

倉庫で動かない布を学生に提供し、新たな作品づくりにつなげる。特に、抜染用の布は提供できる可能性大。

ワークショップの実施

ポコスやタフティングのワークショップを、美大の学生と一緒に開催するのも楽しそう。

ゾウノハナ装飾のコラボ

アートイベントの一環として、美大生と一緒にシンボル的なオブジェを作る企画も考えられる。

スタッフみんなの頭の中が妄想でいっぱいです。

 

ー構想から現実へ…ついにコラボが始動!ー

 

そんなふうに、ただの思いつきだったコラボレーションが、一気に現実になることになりました。


今年の夏、2025年7月26日から29日までの4日間、アートフォーラム横浜で加藤学長による布のトークショーや、横浜美術大学とのコラボイベントが実現します。

今回の視察を通じて、美大と私たちの活動には多くの共通点があり、新しい可能性を感じることができました。

何より、歩いて10分ほどの距離にあるというこの立地。
「布」という共通点を持つ私たちだからこそ生まれる、新しいコラボレーションがどのように広がっていくのか…。

今後の展開がますます楽しみです!

横浜美術大学

https://rebuildingcenter.jp/

 

 

【この活動は、地球環境基金の助成を受けています】

 

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