project -出口をひろげる-

めぐる布市・出口を広げるプロジェクト2024レポート|Sharing Caring Culture(横浜市都筑区)

布の循環量を増やし、リユース品を活用する人を増やすために取り組む「めぐる布市」出口を広げるプロジェクトの2年目。今回ご紹介するのは、NPO法人Sharing Caring Cultureさんの活用事例です。

SCCのクリエイティブ・マンデーズに参加したみなさん

 

NPO法人Sharing Caring Culture(以下、SCC)は、横浜市北部エリアを拠点に、日本で暮らす外国人の子育て支援や多文化交流事業の活動をおこなっています。SCCには、さまざまな出身国の方が活動していて、手芸好きのアキラ・モハンダスさん(インド出身)もその一人。2022年ごろからSCCの自主グループとして、手芸好きのメンバーが集まって、手仕事を楽しむ活動を始めました。

 

子育て中のお母さんたちにとって、家だと家事や子育てに追われてなかなか手芸を楽しむ余裕はありません。ものづくりができたことのうれしさと同時に、「この場をつくってくれてありがとう」と参加したメンバーがとても喜んでくれたのだそうです。活動の場に出かける動機になったり、色合わせや布にふれることで幸せな気持ちなる参加者を見て、「自分が好きで始めたことで、参加者が同じようなハッピーな気持ちになってくれた」とアキラさん。ここで仲良くなる参加者もいました。「ただ集まってのおしゃべりだと何回かで飽きてしまうけれど、ものをつくることは、それ以上に面白さがあるのだと気がつきました」

 

SCC代表の三坂慶子さんも「手芸というクリエイティブな活動でコミュニティをつくっていく取り組みに共感しました」と話します。

 

20251月のクリエイティブ・マンデーズの様子

 

この活動が起点となり、2024年度からSCCは、アートでつながる社会的包摂の場づくりプロジェクト「クリエイティブ・マンデーズ」をスタートしました。「中央ろうきん助成制度カナエルチカラ”2024」を活用し、誰にでも開かれた場として、年齢や国籍、性別問わずに、不登校の子どもからシニアの方まで、幅広い参加者を受け入れています。

 

クリエイティブ・マンデーズでは、20249月から、めぐる布市出口プロジェクトのモニター団体としてリユースの資材を手芸活動に活用しています。アキラさんは以前にめぐる布市を訪れていて、その時のことを「とってもエキサイティングだった」と振り返ります。日本の和物柄に漢字がプリントされたのれん、四季の布地にちりめん、キュートな子ども向けのプリント生地……。それに、詰め放題のあずま袋もうれしかったのだそう。

 

めぐる布市のFacebookページをフォローしていたアキラさんは、出口プロジェクトのモニター募集を知り、SCC代表の三坂さんと相談して応募したのです。モニター団体に決まり、フェルトや毛糸、チロリアンテープ、リボン、ひも、和柄の布、刺繍糸など段ボール45箱分を受け取りました。

アートフォーラムあざみ野の生活工房での活動の様子。手前の布がめぐる布市の布(写真提供:SCC

 

「自分の国にはない色合いの布にふれて、喜びを感じました。リユース品であっても、質もデザイン性も高い日本の布を使えることがうれしいです。予算的に自分たちで買うことができないものを、無償で提供してもらえることに感謝しています。色柄は人によってさまざまな好みがある中で、こうしてたくさんいただけると幅があってとてもいいです」とアキラさん。

めぐる布市の和物の布地を使った制作したファブリックパネルや巾着など

 

手芸好きのメンバーからはじまったこのプロジェクトは、参加者がクリエイターとして得意なものづくりを伝えていく、参加者から参画者になっていくことを目指しています。取材に訪れた20251月、たまプラーザ地域ケアプラザで開かれた会では、インドネシアとブラジル出身のメンバーが、フェルト布を刺繍してつくるラフレシアの花(三つあるインドネシアの国の花の一つ)を教えていました。

 

フェルトに刺繍をほどこしてラフレシアの花をつくっていく

 

真面目な表情で刺繍の工程を教え合っていたかと思うと、次の瞬間には大笑いが起こっていたり、明るくリラックスした雰囲気でみなさん手を動かしていました。中には初めて参加した方もいましたが、打ち解けた様子は常連の方かと思うほど。「みんな手芸をしながらよく笑うんです。出産体験を語り合ったり、晩ごはんやお買い物の話題をしたりいろんな話をします。自分の経験やお下がりを品をシェアすることもありますし、困り事が出たときには情報提供をし合ったり、ちょっとした支え合いのグループのようになっています」とアキラさん。

顔をよせ合って刺繍の手元を見つめる参加者のみなさん

 

クリエイティブなことを軸にした場の魅力について、三坂さんはこう話します。「普遍的なだれもが好きなことをテーマにすると、人が集いやすいし、話しやすいように感じます。アートは広く、多様な人が集まる場になっています」

 

このクリエイティブな活動は、地域へと波及していきます。地域イベントに出展し、布市のプロジェクトと合わせて手作り品を紹介しました。202410月には都筑区のノースポート・モールで開かれたDE&Iフェイスティバルのインターナショナルマルシェに、同年11月には森ノオト主催のあおばを食べる収穫祭のSocial Actionエリアに出展。和物の布を使った小物を出品し、たくさんの方の注目を集めました。

あおばを食べる収穫祭2024では、クリエイティブ・マンデーズで制作した作品を販売(写真提供:SCC

 

同年12月に開かれた都筑区のBOSH株式会社でのクリスマスイベントでは、SCCがめぐる布市の資材を使ったアップサイクルのクリスマスオーナメントづくりを担当しました。イベント当日は親子連れらで大盛況。環境先進国であるドイツの方からは、「リユース」のコンセプトへの反響が大きかったそうです。「寄付されたものを使ってのアップサイクルのものづくり、お金をかけずにみんなで一緒につくって付加価値をつくる。すごくよい取り組みだと、企業の方も喜んでくださいました。自分でつくることでの愛着が生まれますし、実用品として使ったりだれかにプレゼントしたりもできます。アップサイクルということは気持ちが高まります」とアキラさんは言います。

 

BOSHでのめぐる布市の布を使ったクリスマスのオーナメントづくりのワークショプ(写真提供:SCC

 

さまざまなハギレを組み合わせてつくるクリスマスオーナメント。リースの土台も都筑区の企業、株式会社アデムカより発泡スチロールの端材を提供していただき、活用した(写真提供:SCC

 

手芸を通したコミュニティづくり、そして地域にリユースやアップサイクルの魅力を伝えていく取り組みとして、めぐる布市の資材が広がっている様子が 、楽しさとともに伝わってきました。

 

見せていただいたちりめん布の巾着や、着物の布地のファブリックパネルは、それ自体が美しく、外国の方の感性が、リユースのものに新たな価値を与えてくれます。

 

布地の魅力を活かしたファブリックパネル(写真提供:SCC

 

三坂さんは「日本人の私にとっては見慣れて当たり前のように感じていた日本文化に、こうして光を当ててくれて、日本人でよかったとあらためて思えるようなきっかけをつくってくれました。私たちはどうしても欧米に照準を置きがちですけども、日本がもっているものに対して海外の人がすごくいいと思ってくれるものがあると、あらためて理解しました」と話します。

 

刺繍ひとつとっても、布地の見え方も、文化や感性によって違う。いろんな文化を根っこにした方たちがめぐる布市にかかわることで、一度は見捨てられたものに再び光があたる。めぐる布市の資材が、まさにときめく現場を見た活用事例の取材でした。

…………………………………………………..
めぐる布市出口を広げるプロジェクト2024

 

〈お問合せ〉

認定特定非営利活動法人 森ノオト

ファクトリー事業部(担当:齋藤)

factory@morinooto.jp

 

【この活動は、地球環境基金の助成を受けています】

Share on