project -出口をひろげる-

「めぐる布市」出口を広げるプロジェクト② みんなが平等に、好きなものを作ることができる環境を 「荏田東第一小学校 家庭科クラブ」(横浜市都筑区)

布の循環量を増やし、リユース品を活用する人を増やすために始まった「めぐる布市」出口を広げるプロジェクト。今回ご紹介するのは横浜市都筑区にある荏田東第一小学校の家庭科クラブの活動です。

 

横浜市営地下鉄センター南駅から東へ歩いて20分、緑道に隣接した静かな住宅街の中にある荏田東第一小学校では、4年生から6年生が年10回程行われるクラブ活動に参加しています。出口プロジェクトに興味を示してくださったのは、家庭科クラブの担当の鹿野彩先生でした。

鹿野先生自身、森ノオトの活動やめぐる布市のことを以前からご存知で、実際布市にも足を運んでくださったことがあったそうで、その時にたくさんの布にワクワクしてとても楽しかったことをよく覚えていて、きっと子どもたちも喜ぶだろうとの思いからこのプロジェクトのモニター募集に応募してくださいました。

また材料を準備できない児童がいたとしても、安心してクラブ活動に参加できると思ったことも、理由のひとつだったそうです。

その後モニターに正式決定し、鹿野先生には工房に視察に来ていただきました。どのような素材が必要なのか、一緒に考えながら選んでいき、まだ手芸に慣れていない小学生でも作れる小物用に、色々な種類の素材があればとのことで、フェルトやハギレ、カラフルな糸に刺繍糸、レースやリボン、ビーズ、そして針とリッパーなどの道具が入った道具箱を寄付布ボックスに詰め込み、学校へ送付させていただきました。

 

これまでは児童が事前に自前で材料を用意していたとのことで、個人で購入するとなると必要な分しか用意できないので、材料になる素材の種類も限られていたそうです。

「万が一登校時に忘れてきてしまった時には作ることができなかったり、ご家庭の事情だったり様々な理由で材料を用意できない場合もあるので、とても助かっているし、本当にありがたいです。」と鹿野先生。

その言葉を聞いて、出口プロジェクトを通じて「本当に必要な人の元へ、必要なものが届けることができた」という喜びと、リユース布が活用される道が広がっていく可能性を感じました。

寄付布ボックスが届いて初めての家庭科クラブはどんな様子だったのか聞いてみました。子どもたちは驚きとワクワクで、みんな宝探しのように机に集まってきたそうです。

最初は「使っていいの?」と心配していた子どもたちも、「どれでもどれだけ持っていってもいいよ!」と伝えたら、安心して次々と選んで、触っているうちに作りたいものがうまれてくる様子で、参考にする本と材料の間を行き来しつつも、いつのまにか自分のアレンジや材料による変化を加えながら作業していたとのことでした。

豊富な種類の素材を作るときに選べることで、作るものの幅が広がる上に、作りながら付け足したり、これがいいかなあれがいいかなと実際にあてて考えたり、途中で変えることもできるので、創作の可能性がこれまでよりもぐんと広がっていったと鹿野先生は感じたそうです。

 

取材に訪れた1月下旬、子どもたちは「今日も使っていいんだ!」と言いながら嬉しそうに素材を広げた机の周りに集まってきました。パッと選んですぐ制作に取りかかる子もいれば、あれこれ手に取りながらどれにしようか考える子も。小学生向けの手芸本が何冊かあって、それを参考にしながらその場で作るものを決める子もいました。

男女含め18名の児童が在籍している家庭科クラブですが、自ら選んで家庭科クラブに入部したということもあって作ることが大好きな子ども達が多く、おしゃべりもしながらもしっかり手を動かしてものづくりを楽しんでいました。

 

手芸はほとんどしたことがなかったけれど、料理が好きだったので調理実習もある家庭科クラブに入ることにしたんだと話してくれ子は、これまでは針は使わずボンドを使って制作していたそうです。この日は裁縫道具を忘れてしまったとのことで、どうしようかと迷っていましたが、寄付布ボックスの道具箱に針が入っていることを知り、初めて針と糸を使って裁縫に挑戦してみることに。

難しいと言いながらも集中してきれいに縫い進めていて、「初めてなのにとても上手だね!どう?難しい?」と尋ねたところ、「楽しい!」と笑って答えてくれました。

手芸初心者の子ども達にも、手を動かしてものを作る楽しさを知ってもらう機会がもっと増えたらいいなと思いながら、ゆっくりと真剣に針を進める姿を微笑ましく見ていました。

 

フェルトにリボンやレースを合わせてどちらにしようか真剣な顔つきで考えている子がいました。手芸本を参考にしながら、縁にリボンを縫い付けてハンカチを作りたいとのこと。寄付布ボックスについて「色々な種類があって面白い!」と話す彼女。選んだリボンを丁寧に縫い付けていきます。

寄付布ボックスがあることで、色や素材の選択肢が増え、その場でじっくり考えたり、作りながら選び直したり、以前よりももっと自由に選んで作ることができるようになったことはとてもプラスになる変化で、出口プロジェクトが子ども達の可能性を広げる手助けになっていると感じて嬉しく思いました。

 

手芸が好きで家でも今まで裁縫をやってきた子どもたちも多く、手際よくどんどん作っていく姿に感心するばかりでした。家庭科クラブの活動時間は正味40分程しかないのですが、あっという間に完成させている子もいて、帰り際に作品を見せてくれました。その子は今まで作ったものをいくつかランドセルや手提げ袋にも付けていて、手芸が好きという気持ちがよく伝わってきて、こちらも幸せな気持ちになりました。

 

 

前回寄付布ボックスで選んだ材料を使って作ったものも持ってきてくれた子ども達も多くいて、作品を見せてもらいました。端処理も必要なく扱いやすいフェルトを使っている子が多く、ビーズでデコレーションしたり、フリンジをつけたりと、自分らしいアレンジを施していました。写真では分かりづらいのですが、抹茶のロールケーキはしっかりわたが詰められていて立体になっていています!

 

時間が足りず、時間内に完成できなかった子や、家でも作りたい子は材料を持ち帰ることもできるので、クラブ活動の終わりにはたくさんの子が材料を選んで袋に詰めていました。お店に材料を買いに行く必要もないので、家でもすぐに作り始めることができます。

 

「以前の作りたいものを決めて、その材料を自分で持ってくるやり方でやったときと比べると、より自由に、臨機応変にあるもので変化を加えていく力もつくし、材料を忘れたり持っていないから諦めるようなものにも挑戦してみたい!もっとつくりたい!という意欲がよりわいているのを感じます。」と鹿野先生。

「作り方を聞いてくる子もとくにおらず、自力でやりたいという気持ちもより強くなったように感じます。もちろんこちらはいつでもサポートに入りますが、自分でやり遂げたいと考えている子が多かったので、あえて手は出さないで、あたたかく見守っていました。1つ作った子はさらにもう一つとどんどんつくっていたので、改めて、環境を整えてあげれば子どもは自分からやることを感じました。」と嬉しそうに伝えてくれました。

荏田東第一小学校の家庭科クラブを見学させてもらって印象的だったのは、先生方が教えるというよりも、優しく見守っている姿です。もちろん声がかかれば教えることもあるのですが、基本的には子ども同士で教えあったり、助け合いながら作っていました。

場や環境さえ整っていれば、自分で成し遂げる力をみんな持っているということを大人がわかっているからこそ、子どもたちが自由に自分で考えて作ることができるのだということも、改めてわかったことの一つです。

子ども達みんなが平等に、好きなものを作ることができる環境を。

一人の先生の熱い想いが出口プロジェクトと繋がって、寄付布を生かす場が広がったことは、とてもありがたく嬉しいことでした。

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★めぐる布市出口を広げるプロジェクト★

 

【詳細はこちら】
https://applique.morinooto.jp/works/hirogeruproject_2.html

【映像はこちら】
https://youtu.be/mhZEpyQ3OmQ

【これまでに取材した記事はこちら】

▶ つながる手と手で生まれる染織「クラフト工房 La Mano」(町田市金井)
https://applique.morinooto.jp/project/lamano.html

▶みんなが幸せであるために 「ままリズム ぱぱリズム」(横浜市青葉区)

https://applique.morinooto.jp/project/mamapapa.html

 

※この出口を広げるプロジェクトは、地球環境基金の助成を受けて活動しています

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