布の循環量を増やし、リユース品を活用する人を増やすために取り組む「めぐる布市」出口を広げるプロジェクト。今年で3年目になりました。
今回ご紹介するのは、「横浜市地域活動支援センター・ごぼうハウス都筑」さんの活用事例です。
地域活動支援センターは、障害のある方の日中の活動をサポートする場です。製菓、手芸、販売など、生産活動や創作的活動を行い、利用者さんの地域での生活を支援しています。
今回訪れたのは、横浜市都筑区にある、ごぼうハウス都筑です。

横浜市営地下鉄センター南駅から、歩いて10分ほど。住宅街のあいだに、片流れの屋根と丸い窓、「焼き菓子」の旗がひらめく、ごぼうハウス都筑があります。
ごぼうハウス都筑は、知的、身体の障害のある利用者さんが、毎日10名ほど活動をされています。広々とした厨房では焼き菓子を作り、隣のお部屋では手工芸などの活動を行っています。さらに、お菓子などの販売と、カフェスペースも併設。地域交流室というこの場所は、特に地域の方の利用が多く、遠方からごぼうハウスの味を求めて訪れる方もいらっしゃいます。誰でも利用することができ、手作りのお菓子と飲み物などをいただくことができます。

「ごぼうハウスの名前なんですが、誰も由来が分からないんです」と教えてくれたのは、所長の青山さん。平成9年に、開設した「地域作業所・ごぼうハウス」がスタート。そこまでは分かるものの、初代の所長さんはすでに他界されており、由来は分からずじまいとのこと。「でも、きっと名前に付けるくらいだから、ごぼうが好きだったと思うんですよね」。せっかく名前に入っているのだから、と、ごぼうを使ったクッキーやごぼう茶も作っていらっしゃるとのこと。もしかして、ごぼう自体も栽培されている…?と伺ったところ、「ごぼうは自家製ではないんです。でも、実は挑戦していて」と窓を開けてくれました。そこには、土から顔を出した、丸みを帯びた葉っぱが。ごぼうの袋栽培にチャレンジ中です。

厨房でのお菓子作りと、作業室での手作業。今回は、作業室を取材させていただきました。皆さんそれぞれに違う活動。絵を描く、新聞紙でミニバッグを作る、編み物をする、など、ご自身のペースで作業を進めています。


編み物に使われている毛糸は、今回の出口を広げるプロジェクトで届いたものだそう。円形に並んだピン1本1本に毛糸を巻きつけながら、下から上へと毛糸をひっかけ直していく…昔大好きだったリリアンという編み機を思い出しました。毛糸をかぎ針ですくってひっかけ、すくってひっかけ…と繰り返していくと、筒状の編み物ができてきます。


両端をかがると、カラフルなアクリルたわしの出来上がり。「アクリルたわしは、少しの油汚れだったら洗剤を使わずに、洗い物ができるんです。手荒れしにくいのでいいですよ。ここでも使っています」と青山さん。

見た目は可愛らしいけれど、作るにはかなりの時間と集中力、手の力も使う作業。休憩を挟みながら、無理のないペースで作られています。「肩がこります」と言いながらも、少しお休みして、また別の色の毛糸を編んでいらっしゃいました。
作業室の一角には、大きな織り機が。さをり織り、という織物を作る織り機を、車椅子でもそのまま使えるようにしたものだそう。

糸を張る部分より下のスペースは、車椅子のまま足が入れられるよう広々しています。また、誰でもわかりやすいようにと、目印のシールが貼られていたり、工夫が凝らされています。どう使うのかな?と思っていたら、利用者さんが見せてくださいました。
縦糸が上下に張られている間に、細い布を右から左に通して、足でペダルを踏む。すると、縦糸の上下が入れ替わります。そして、筬(おさ)という大きな櫛のようなバーを手でくっくっと手前に引いて、今通した布をぎゅっと細く。これで一段織れます。


次は反対に、左から右へ通して、ペダルを踏み、バーを引いて、織り込む。右、左、右、左と交互に布を通しながら織っていきます。左右に通す細い布は、古布を手で裂いたもの。
「あまり硬い生地でなければ使えます。古くなったTシャツなども使えますよ」
1センチくらいの幅の布がぎゅぎゅっと織られて、模様を作っていきます。こちらは、明るい色の生地を織り交ぜると映えるそう。少しずつ織られた織り物はもうかなりの長さに!

たとえば、と青山さんが持ってきてくださったのは、さをり織りを、パッチワークのようにつなげた一枚布。ごぼうハウス都筑は、センター南駅や、都筑区役所での出張販売も行っています。この布は、外での販売の際に、テーブルに敷いて使っているとのこと。素材がバラバラな布なのに、お互いの色合いを邪魔をすることなく、優しく明るい色合いの敷布になっています。
ごぼうハウス都筑で一番大きな作品。両手でも広げきれないほど!
敷布やコースターのような一枚布の形だけでなく、サコッシュやポーチなども作ってみたい、と話します。さをり織りの織物は厚みもあって、とてもしっかりした生地。これはポーチに、こっちはバッグの持ち手にもなりそう、とこれからの形を色々思い描いています。

これまでは、毛糸や布は、買ってきたり、それぞれが自宅で不要になったものを持ち寄ったりしていたそう。「いただいた生地は想像していたよりいっぱい届きました。織物にするには難しい、無地のしっかりした生地もあるので、みんなで無地の布に絵を描いて、外の旗を新しく作ってみようと考えています」と、新たな布の使い道も構想されていました。

ごぼうハウス都筑では、厨房と作業室のメンバーは、常に入れ替わります。どの利用者さんも、製菓に入ったり、手作業をしたり。「内容も、メンバーも、なるべく偏らないようにしています。午前は製菓だったら午後は手作業、今回はこのメンバーが製菓だったから、次は違うメンバーで、など、流動的になるように組んでいます。いろんな刺激があった方がいいな、と思っていて」と青山さん。作業内容も人も常に一定ではない環境を、あえて作り出しています。
「ゆったりする時間って、意外とないんですよ。だから、作業室でゆっくりしたり、他の方とお話したり笑ったりしながら過ごす時間も大切だなと思っていて」
午後の日差しと外からの風が心地よい中で、作業をする傍らお話する方もいれば、やりとりの中で笑いが止まらなくなる時もある作業室。厨房での製菓は、白衣とマスクに身を包み、軽量や調理の作業に集中し、オーブンの時間にも気を配ります。自分のペースで進められる手作業は、気持ちも身体も緩む時間なのかもしれません。

偏らないように、いろんな刺激に触れ合えるように。それは、利用者さんの活動だけではなく、青山さんの姿とも重なります。
「森ノオトさんと繋がれたことも、とても刺激になりました。やっぱり、同じところだけにいると、世界が狭くなってしまうから」と青山さんは話します。
それぞれの作業を進める利用者さん。作業の手が止まったり、困っている顔を見つけると、青山さんは穏やかなトーンで話しかけます。「こんなのもあるけど、どうですか」と作業のヒントになりそうな物を提案すると「やってみたんだけど、ここがうまくいかなくて」と返ってくる。「次はこれをやりますか?」と様子を見ながら活動を促すこともあれば、「これはどうしたらいいんだっけ?」と利用者さんが青山さんに尋ねたり。
一方向ではない、それぞれに声をかけ合うことが、潤滑油のように作業の時間をゆったりと動かしていました。
「できることは自分で。できないことは、お互いに助け合おう」
ごぼうハウス都筑のコンセプトです。
誰しも、得意なこと、苦手なことがあります。自分でできることは自分で。難しいところは「手伝おうか?」「ちょっと助けてくれる?」と互いに声をかけ合って、自分の世界も広げていきたい、と感じる場所でした。
誰かと誰かがお互いを知り合うきっかけに。誰かの得意と誰かの苦手をつないで次のものを生み出す場に。めぐる布市も、そんな活動であれたらと願っています。
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「NPO法人ごぼうハウス 横浜市地域活動支援センター(作業所型) ごぼうハウス都筑」
住所:〒224-0033横浜市都筑区茅ヶ崎東4-13-20
TEL:045-948-3474
FAX:045-948-3475
Instagram:https://www.instagram.com/gobouhousetsuzuki/
地域交流室:○平日10:00〜16:30 ○土日祝日 休業日
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めぐる布市出口を広げるプロジェクト2025
〈お問合せ〉
認定特定非営利活動法人 森ノオト
ファクトリー事業部(担当:齋藤)
【この活動は、地球環境基金の助成を受けています】
