ソーイング作家の伊藤みちよさんにとって、「めぐる布市(以下、布市)」との出会いは、大きな転機となりました。
出会いのきっかけや、その後の関わりのなかで生まれた変化について、あらためてお話を伺いました。

「布市さんがあるマーケットに出店されていて、そこでリップクリームケースを買ったのが最初の出会いでした。
寄付されたファスナーが増えてきたので、それを活用するために作っていると聞いて、素材ありきで商品を考える視点が面白いなと思ったのを覚えています」
その後、アートフォーラムあざみ野でのワークショップや、象の鼻テラスでのイベントなどを通じて、伊藤さんと布市との関係は少しずつ深まっていきました。

「2017年頃から知っているので、もう長いですよね。最初は小さな端切れが中心だったと思うんです。
でも今はお洋服が作れる大きさの布の扱いも増え、ボタンやファスナーなどの副資材も充実してきた。進化しているなと感じています」
伊藤さんがとくに魅力に感じているのは、デッドストックをはじめ“もう手に入らないもの”に出会える点だといいます。
「アンティークの物差しだったり、昔のボタンだったり。それが宝探しみたいで楽しいですよね。
しかもディスプレイが本当に素敵で、同じ布でも見せ方でこんなに違うのかと驚きました。
たたみ方ひとつで、魅力が格段にアップするんですよね」
私たちのもとへ全国から寄付される布は、その梱包から送り手の気持ちが伝わってくることが多くあります。
きれいに小分けされていたり、ボタンや糸の束にメッセージが添えられていたり。
そのことを伊藤さんに伝えると、次のように話してくれました。
「モノだけではなく、想いごと次の人へ渡す場所なんですよね。だから『めぐる布市』って、本当にいい名前だと思います」

伊藤さんは、自身が主宰する教室の生徒さんたちにも、布市の存在を伝えているといいます。
「こんな場所があるよと話すと、皆さんイベントに足を運んでいますね。
家に眠っていた布を寄付して、また新しい布を買って帰る。
今の気分じゃないものを手放して、今作りたいものを迎え入れる。そうやって巡っていくのがいいですよね」
リユース布について、作り手の立場からどう感じているのか尋ねると、伊藤さんははっきりと「いいと思います」と答えてくれました。
「商品にするのは難しいですけど、自分で使う分にはまったく問題ありません。
むしろ、デッドストック布だからこそ生まれるアイデアがある。サイズがまちまちでも、それを楽しめる人にはお宝の山です」
実際、教室の生徒さんのなかには、布市で購入した布だけで作品を仕立てる方もいるそう。
「皆さん、うまく掘り出し物を見つけてくるんです。
自分の手持ちの布に合わせてデザインを考える。その自由な発想が素敵だと思います」
めぐる布市で開催するハギレ活用コンテスト「めぐるクリエイティ部」の審査員も務める伊藤さんは、
作品から伝わる“圧”や“熱”を大切にしていると語ります。
「独創性とクオリティの両方を見ていますが、なにより布が好きという気持ちが伝わるかどうかが大事ですね。
実物を見ると、その熱量が分かるんです。とくに子どもたちの作品は、できるだけ評価してあげたいなと思っています」

地元横浜で大きなつながりが生まれたことも伊藤さんにとって大きな意味があったといいます。
「じつは洋服を売ることはしてきましたけれど『地域で何かを一緒にやる』という機会が少なかったんです。
だからこうして声をかけていただいたときは、本当にうれしかった。
自分がともに暮らしている地域の中で、こういう活動に関われることがありがたいなと思っています」
めぐる布市は、布を愛する人々が集い、その思いを受け取り合いながら次のかたちへと手渡していく場です。
そうした循環のなかで、伊藤さん自身もまた、人との巡り合わせに恵まれた豊かな時間を重ねています。

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ソーイング作家|伊藤 みちよ(いとう みちよ)
MayMe(メイミー)主宰。
横浜を拠点に「シンプルでどこか可愛らしく、長く愛用できる服」をコンセプトに活動。
著書多数。国内外でのワークショップやイベントを通じて、布や素材を活かした手仕事の楽しさを伝えている。
『めぐる布市』のコンテストでは審査員を務め、布への深い愛情と独自の視点で活動を応援している
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めぐる布市出口を広げるプロジェクト2025
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ファクトリー事業部(担当:齋藤)
【この活動は、地球環境基金の助成を受けています】
