布の循環量を増やし、リユース品を活用する人を増やすために取り組む「めぐる布市」出口を広げるプロジェクトの3年目。今回ご紹介するのは、「住吉山実里+おどのま」さんの活用事例です。

「おどのま」は振付家のはらだまほさんが中心となって活動するアート集団で、スペシャルニーズ(発達上の特性などにより日常生活や教育において特別な配慮が必要)の子どもたちに向けた舞台芸術を創作するためのリサーチ企画「アートと子ども スペシャルニーズ編」を2年計画で進めています。
アーツカウンシル東京の「芸術文化による社会支援助成」を受けて実施しているこのプロジェクトでは、2025年度に児童発達支援センター3カ所でのリサーチを行い、2026年度に劇場公演とアウトリーチ(各施設に出向いての)公演を行うことを目指しています。
5年ほど前から、「リラックスパフォーマンス」という、障害などを理由に従来の劇場鑑賞に不安がある人も安心して楽しめる公演形態に参加しているはらださん。
しかしやはり劇場に来てもらうこと自体が難しいという現実を目の当たりにし、どうしたらもっと多様な人に芸術体験を届けることができるかということを考えていたそうです。
そんな時にはらださんはヨーロッパ各国の子どものための舞台芸術フェスティバルを訪れ、スペシャルニーズの子どもたち向けの企画がどのフェスティバルにも必ず一つはあると知ったことから、自分でも作ろうと思い立ちました。

この企画に舞台美術として携わるのがアーティストの住吉山実里さん。布などの素材を使った小道具を制作し、リサーチの現場での子どもたちの反応を見ながら手を加えていきます。この日お邪魔しためばえ学園(東京都世田谷区)でのリサーチでは、体に巻くことができるカラフルな布飾りと、帯のように長い形に縫い合わされたさまざまな質感の布、ヘビのような形の布の物体、そしてビニールの長い筒とチャフチャスというブレスレット型のマラカスのような楽器、フレクサトーン(金属板と振り子を組み合わせた楽器)が用意されました。

初めは子どもたちが自由に過ごす教室に入り、小道具を置いてみたり、子どもの反応に合わせて体を動かしてみたり。何かワークショップを行うというよりも、施設のいつもの活動の中に入って、一緒に遊んでみるようなつもりで行うそうです。とりあえず目についた新しいものを端っこに集める子、人形で遊びながらヘビ型の物体を満足げに首にかけて歩き回る子、はらださんをコロコロ転がして遊ぶ子など、それぞれの子が少しずつ大人たちと小道具に興味を示します。
続いて入った教室では、即興パフォーマンスを見てもらいます。不思議な動きを座ってしっかり見ている子もいれば、腕に下げた布の飾りに飛びついて追いかける子も。一通りパフォーマンスが終わると、また一緒に遊びます。長い布の上を花道のように歩いたり、けんけんぱをしたり、縄跳びのように使ってみたり。楽器が大好きなようでずっと嬉しそうに音を出している子もいました。

前回訪れた時とは反応の良さが違ったそうで、めばえ学園の大岩香代子園長先生も子どもたちの成長ぶりに感心したと話してくれました。「何かに興味を持ってもらうことがなかなか難しいため、いかに接点を持つか、人を認識してもらうか工夫し、関係を育てていくことで少しずつその幅が広がっていくんです。今日のパフォーマンスのあいだは動きを追ってちゃんと見ていましたね」
リサーチ後は、「前回はあまり食いつかなかった小道具も大きさや数が変わることで関心を示してくれた」「こんな質感のものが気に入ったみたい」「今回はこの音は嫌がらなかった」など、その日の様子や気付いたことをメンバー間でシェアして今後につなげていきます。
「1対1のコミュニケーションになって、各々のところで何が起こっているか全然違うことも多いんです。私が作ってきたものを子どものちょっと近くに置いて、初めはすぐに反応しないんですけど、知らないフリをしていたらジワジワ触りに行っていたり。そういう待つ時間も大事にしています」と住吉山さん。
はらださんは、「ダンスは言葉とは違うコミュニケーションであることが特徴だと思っています。私を見てほしいというよりは、彼らの世界に入っていって、アートを感じてもらいたい。感じていることをこちらがキャッチするために何ができるかを模索していきたいです」と語ります。
「アウトリーチをすることで親御さんにもどんな作品か、どんなサポートがあるかということを体感いただいて、劇場に行くハードルが少し下がるといいなと思っています」とはらださん。施設によっても、年齢によっても、時期によってもみんなそれぞれ違う子どもたちの反応から、どんな作品が生まれるのでしょうか。
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住吉山実里さん(orangcosong)
おどのま
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めぐる布市出口を広げるプロジェクト2025
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ファクトリー事業部(担当:齋藤)
【この活動は、地球環境基金の助成を受けています】
