2023年4月から、地球環境基金の助成を受けスタートした、めぐる布市の出口を広げるプロジェクト。
今年度は福祉施設や教育施設、学校など、13の団体でモニターとして活用いただくことができました。
楽しそうに活用してくださっている様子を見せていただいたり、実際の現場の声などをお伺いでき、
必要としているところに届けられたことへの嬉しさと、新たな広がりを感じる一方、
日常の工房運営の中でも、まだまだできることがあるのではないか、という気持ちもあったので、
視察の機会を得られたのは、何かまたスタッフの中から新しい着想が生まれるのでは、と、ワクワクしました。
今回視察を受け入れてくださったのは、VIVITA JAPAN(株)です。
VIVITAは、日本国内をはじめ、世界11ヶ所に拠点を構え、子どもたちのためのクリエイティブラーニングスペースの運営や、
アイデアを具現化するツールの開発、自立共生のためのグローバルなコミュニティを構築している団体です。
子どもたちは参加は無料。お金の制約なしに、全ての子どもたちに機会を与えたい、という思いが込められています。
お伺いしたのは、その中の一つ、東京都小金井市にある「VIVISTOP」。
ガラス張りで美しく、高架下のイメージがガラリと変わるようなおしゃれな空間に、到着した早々テンションが上がりました。
今回迎え入れてくださったのは、VIVITA JAPAN(株)の佐藤桃子さん。
実は、佐藤さんは、今回の出口プロジェクトの寄付先募集を、利用者の親御さんから聞いて知り、素材の寄付希望にご応募いただき出会いました。
工房にもきていただいたのですが、その時の、素材を見る視点が、普段の手芸好きなお客さまとは全く違い、その違いがまた面白く、印象的でした。
「使われないボタンは、色を染め替えたり、溶かしたりして使えないだろうか」
「ハギレは、裂いて溶かして紙にできる!」
その時に見せていただいたのが、実際に子どもたちと一緒に天然素材のハギレから作った鉢植えポット。
「天然素材でないと土に還らないので木綿や麻などの素材を使って….」と
子どものようにキラキラした目で話す佐藤さんと、お話に伺うVIVITAの活動などに非常に興味を持ち、視察の受け入れをお願いしたのでした。
中に入った途端、あまりに行き届いた整理整頓ぶりに、みんな感嘆の声をあげてしまいました。
私たちの課題が、まさに「整理整頓」。
日々届く段ボールと、形が一定でない、大量のものたちの整理に明け暮れているため、その美しい整列ぶりは眩しいほど。
これらも、全て佐藤さん手作りの棚たち。市販を買って揃えるだけではなく、用途に合わせて、カスタマイズして取り出しやすく、さらに子どもたちが自ら
自分で片付けがしやすいよう、ものの場所をきちんと決めてあるとのこと。
真似したいポイントがいっぱい詰まっていました。
VIVISTOPでは、決まった何かを作る、というというワークショップのようなものはありません。
何かを作るために材料を用意するのではなく、「あるものでなんとかする」「あるものから生み出す」ブリコラージュを大切にしています。
「ブリコラージュ」初めて聞く言葉でしたが、調べてみると、寄せ集めて自分で作ること、物を自分で修繕すること、という意味なのだそう。
やってみたい!ことが見つかると、それをするためには、何が必要なのか、どうすればできるのか、調べ、道具を作るところから。
材料は、ほぼ全てが物々交換や作ることで成り立っているというのも驚きです。
「布地は綿になるのだろうか」そんな子どもの疑問から始まった綿づくり。
材料は、佐藤さんが着用しなくなった古い洋服。それを小さくカットして、さらに手作りの反毛機で綿状にします。
さらにその出来た綿をお手製の電動糸紡ぎ機で糸に紡いでいくことで出来上がった糸は、格別。
スタッフも、実際に半毛や糸紡ぎを体験させていただき、大興奮でした。
その日、佐藤さんと一緒に迎えてくれたのは、小学6年生のIちゃん。
彼女は、工房から寄付でお渡ししたボタンを、きれいな色に染め直し、新たな活用用途を探っていました。
実は、工房にはたくさんボタンが届くのですが、きれいな色からどんどんなくなるので、いつも白や黒の地味なボタンが残ってしまいます。
この残りがちなボタンがなんとかならないかなと話していたところ、佐藤さんが「ちょっと考えてみますね」と持ち帰ってくださっていた物でした。
びっしりと実験の様子が書かれたIちゃんの手描きノート。
同じ染料を使っても、素材によって染まり方が違うため、さまざまな物を一つずつ試したそう。
実験の過程や試行錯誤の様子、漏れ出る心の声まで書かれたスケッチは秀逸で、これを6年生の女の子が描いたの?と驚きの連続でした。
ハギレや毛糸、革などの手芸素材から、木工などのDIY、3Dプリンターやレーザー加工機など、アナログとテクノロジーがバランスよく詰まった、まるで基地のような場所。
ただ与えるのではなく、どこまでも自主性を尊重し、自分で思いつき、自分で考え、作り出す。それを、大人は必要以上に手を出さず、見守る。
こんな場所が近くにあったらいいなあ。子育て中の母が多い工房スタッフは、親の立場としても感じるところがあったよう。
私たちに託されているたくさんの素材の新しい出口とすぐにも取り掛かれるアイデア、課題をスタッフみんな、それぞれの立場でたくさん受け取り、充実した1日でした。
ここで得たものを、どう、自分達に落とし込んでいくか。
日常に戻ると、日々に追われ忘れがちですが、せっかく得た新しい視点を、今後に活かしていきたいとワクワクする視察の旅でした。
VIVITA JAPAN
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★めぐる布市出口を広げるプロジェクト★
【詳細はこちら】
https://applique.morinooto.jp/works/hirogeruproject_2.html
【映像はこちら】
https://youtu.be/mhZEpyQ3OmQ
※この出口を広げるプロジェクトは、地球環境基金の助成を受けて活動しています