布の循環量を増やし、リユース品を活用する人を増やすために始まった「めぐる布市」出口を広げるプロジェクト。今回、ご紹介するのは、横浜市緑区長津田で活動されている、ゆずりあい会さんです。
ゆずりあい会は、長津田在住のママと子どもたちのボランティアグループ。年に数回、子ども服や子育てグッズの無料交換会を開催されています。今回は、この交換会にお邪魔してきました。
12月最初の日曜日、雲ひとつない快晴。日差しが暖かく、吹いてくる風が心地いいくらいの陽気です。会場は、JR横浜線長津田駅からバスで10分ほどのところにある、玄海田公園。この日は、ゆずりあい会の他に、ワークショップや、コミュニティカフェ、おはなし会のコーナーもありました。
マンションや一戸建てなどの住宅、大型スーパーもある中に、サッカーコートや野球場などの施設、蛍が見られる谷戸の景色までもが広がります
広い原っぱ、遊具広場に、なんとヤギの姿も
開始30分前。遊具広場の前にいくつものシートが敷かれ、スタッフの方々が新生児〜160のサイズ別に子ども服を並べていました。タープが張られた下には、絵本のおゆずりスペースも。
今回のイベント当日は、13名のボランティアさんで運営。スタッフのお子さんも、会場の飾り付けや段ボールの看板作り、品物を並べるなど、ボランティアとして参加しています。
サイズや品物の案内が段ボールにカラフルに描かれ、それぞれの場所に設置されています
ベビーカーを押しながら、赤ちゃんを抱っこしながら、子どもの手を引きながら。男性の姿も多く見られました
気づけば、受付テントにはずらりと長い列。
10時、受付スタート。並べられた洋服のまわりを、あっという間にたくさんの人が囲んでいました。
お昼前には、品物が全て誰かの手に渡ったコーナーも
ゆずりあい会の始まりは、2023年。長津田在住のママ同士3人が集まって、立ち上げました。
3人に共通していたことは、「自分の家のものを手放して、誰かに譲りたい」。
それまでも、保育園や市役所での譲り合いの場はありましたが、コロナ禍で軒並み中止、休止に。友人と話していたら、同じように物の手放しに悩んでいることを知りました。ネックとなっているのは、子育てをしながら自分で譲り先を探すことでした。
そんな中、不要なものと必要なものを交換する会を、個人で開催している取り組みを知ります。自分で、誰かと一緒に会を開いてもいいんだ!と、友人同士でゆずりあい会を始めることになりました。
なるべくゴミが出ないよう、看板も入れ物も段ボール。手伝っている子どもボランティアは、保育園時代からのお友達が多いそうです
ゆずりあい会を始めた時、代表の小西さんお子さんは2歳、小1、小3と、子どものことで何かと忙しい時期。一方、子どもが少し手を離れ、今なら何かやれるかな、と会に関わり始めた方も。手芸が好きなその方を通して、めぐる布市とのつながりも生まれました。
手放したものは、次の誰か必要な人へ。ゆずりあい会と、めぐる布市のコンセプトは重なることから、出口プロジェクトへの応募を勧めてくださったそうです。
出口プロジェクトでは、布や資材をより多く活用してもらえるよう、どんなものを提供するか、相談しながら内容を選びます(撮影:ゆずりあい会)
「子育て世代の方が多く関わるので、入園グッズ作りに使えそうなもの、持ち手やリボン、フェルトなどを入れてもらいました。でも、それに限らず、色々な材料を入れてもらっています」(代表の方)(撮影:ゆずりあい会)
さて、布の活用の第一弾は、交換会の装飾品の製作です。
一つは、コサージュ。毛糸や持ち手、レースなど、様々な素材が組み合わされています。これも交換会のものとして、もらえるんですか?と手に取る方もいらっしゃいました。あたたかみのあるコサージュは、思わず触りたくなるような可愛らしさがあります。
「色んな素材があると、異素材の組み合わせを考えるのが楽しいんですよね!そして、新品の毛糸じゃないからこそ、ふわっとした味わいが出やすい」(製作した方)
もう一つは、クリスマスツリー型のオーナメント。「段ボールをツリーの形に切って、マスキングテープを貼って、毛糸を巻いただけなんですよ」と、難しくない手順。我が家にも段ボール、毛糸、マスキングテープはありますが、材料があるだけでは手が動かない…。けれど、レシピを知ると、できるかも、やってみようかな!と気持ちが動きます。
手に取られた方に、作り方をぱぱっと説明。一つずつ違った味わいのツリーです
今回は、およそ160組320名の方が訪れ、1600点以上の品物が、次の方の手に渡りました。近隣でも、姉妹グループの会が始まり、その輪は広がっています。
これからは布を使って、一緒に何かを作る交流の場、ワークショップなどに広げていきたいそう。「子育て真っ最中は、自分のための時間も、物も、後回しになりがち。材料や道具を買うほどではない…けれど、あったらトライしてみたい、っていう人は多いと思うんです。一から作るのは大変だけれど、途中まで揃っていたら入りやすいですよね」と装飾を作られた方は話します。
思い出のランチョンマットの残り布で作ったガーランド。布市の布以外でも、新たな活用の仕方に取り組んでいます
大人も子どもも、あっちのブースからこっちのブースへ。そして、行った先で知り合いの方とお話をして、来場者の方と言葉を交わして、時には子供が「おなかすいたー」と駆け寄ってくる。ゆずりあい会には、笑顔と会話がたくさんありました。
子育て世代の方々がより元気よく
より楽しく生活できる未来を
みなさんと一緒に作っていきたい
ゆずりあい会の、初めてのInstagram投稿に載っている文です。
SDGsやサステナビリティといった、よく聞く言葉よりも、もっとやさしくやわらかい言葉をあえて選んだそう。「堅苦しくないから、生活を感じられるんですよね」と、装飾を製作された方も話します。
ゆずりあい会に足を運んで、感じたのは「なるべく、ハードルを下げたい。そして、いろんな人の最初の一歩になってほしい」との思いでした。
ゆずりあい会代表の小西さん(左)と装飾を製作された福田さん(右)。仕事に子育て、会の運営、大変ではないですか?と尋ねると「スタッフのみんなが、勝手にどんどんやってくれるんです」と話すのは代表の方。その笑顔とやさしい言葉、楽しそうな様子は、自然と手伝いたいなぁと思ってしまうようです
内心思っているけれど、行動に移せない。ゆずりあい会は、そんな時に「ちょっと一緒に楽しんでみませんか?はじめの一歩って軽くていいんだよ」と手を取ってくれる場所に感じられます。
めぐる布市の布も、生活を楽しく彩る布から、次は誰かと一緒の場を作る布へ。
二歩目が楽しみになる、日曜日でした。
<Information>
ゆずりあい会ホームページ
https://sites.google.com/view/yuzuriaikai/
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めぐる布市出口を広げるプロジェクト2024
〈お問合せ〉
認定特定非営利活動法人 森ノオト
ファクトリー事業部(担当:齋藤)
【この活動は、地球環境基金の助成を受けています】