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めぐる布市・出口を広げるプロジェクト2025レポート|BankPark YOKOHAMA(横浜市中区)

布の循環量を増やし、リユース品を活用する人を増やすために取り組む「めぐる布市」出口を広げるプロジェクト。
今年で3年目になりました。

今回ご紹介するのは、「BankPark YOKOHAMA(バンクパーク ヨコハマ)」さんの活用事例です。

3つのパネルに分けられた大きな作品

 

「めぐる布市」の布は、オープニングにあたって展示するアーティストの作品のために提供されました。切ったケーキのような形の建物の先端にあたる入口から入ると、ちょうど向かって奥の壁に堂々と飾られています。制作したのは、生地を埋め込む独自の手法を使う「キメコミアート」作家のイワミズアサコさん。横浜の港の風景の中にシンボル的な建物をたくさん組み合わせ、浮世絵や伝統的な織物を想起させる独特のカラフルな色使いと多様な生地の質感でおとぎ話の世界のような仕上がりになっています。

 

10月3日のBankPark YOKOHAMAオープニングセレモニーでは、山中竹春横浜市長と鶴見大学附属中学校・高等学校の生徒たちが最後のピースをイワミズさんと一緒にキメコんで、作品を完成させました。切り込みを入れた発泡スチロールに布をかぶせてヘラでぐいぐいと押し込み、外側にはみ出た布はハサミでチョキチョキ切り取ります。数ミリ残った布は、またヘラで押し込む。この作業を小さな範囲で何度も繰り返しているのを見ると、とても細かく地道な作業なのだとわかります。

ちょうど真ん中に描かれたBankPark YOKOHAMAの建物の入口部分を、最後にキメコんで仕上げていました

 

使われている布は、横浜繊維振興会からの提供分も含む約200種類にのぼります。土台となる廃材の発泡スチロールも横浜市内の企業の提供を受けて制作されました。下絵を描いて計画的に作っていくのかな? と思いきや、その場その場でかなり自由に作るそう。中華街の門が一番大変だったとのことで、よく見てみるとたしかにその細かさがわかります。

近くで見ると凹凸感がよくわかり、それぞれの素材の質感や光沢が活かされているのもよく見えます

 

イワミズさんは、ファッションデザイナーとしてキャリアを積んだ後、2008年からアーティストとして活動を開始。薄利多売や過剰包装など、“ファッション大国日本”で感じる問題に着目しながら、スタイルとテクニックを確立させていったそうです。「キメコミアート」は人形にみられる日本の伝統技法「木目込み」から着想を得たもので、古着や服を作る過程で出るサンプル用の生地、廃材などを積極的に利用し、平面だけでなく立体的な作品も作っています。

 

全国各地の商業・文化施設や芸術祭、そして海外でも展示やワークショップを行い、「布を通じて世界をつなぐ旅」をしているイワミズさん。山中市長と生徒たちがキメコミアートに挑戦していた場面を思い出すと、老若男女が楽しめるワークショップの光景が浮かぶようです。活動はその土地ならでは伝統工芸の記事を使うなどさまざまなコラボレーションにもつながり、日々新たな可能性を切り拓いています。北九州では縞模様が特徴の「小倉織」のハギレ、上海のファッションブランドとのコラボ企画ではブランドの余剰生地を使用したのだとか。

BankPark YOKOHAMAではイワミズさんのほかの作品も展示されています

 

「その地域の問題を見つけて、そこにあるものを価値にしていくんです」と語るイワミズさんの作品。今回も、まさにサステナブルなまちづくりをめざす横浜の価値を体現していますね。オープニングセレモニーに参加した中高生たちに気を配り、作品の前で話し込んでいる様子が印象的でした。

 

この度イワミズさんの作品への布の提供が実現したのは、BankPark YOKOHAMAを運営する株式会社竹中工務店と1階スペース「CRAFT.」を手がける株式会社CRAFTING JAPANの「横浜で活動している人と工芸やアートをつなげ、発信していきたい」という思いから。新たな施設オープンに向け横浜市内のさまざまな企業や団体と意見交換を重ねる中で、出口プロジェクトへの参加につながりました。竹中工務店開発計画本部の倉田駿さんは、「横浜にはランドマークがたくさんある中で、巧みに一枚の絵に表現していただきました。横浜とアートをここから盛り上げていくきっかけになれば」と話します。

竹中工務店開発計画本部の倉田駿さん。竹中工務店は、2003年にこの建物が現在の位置へ曳家(建築物をそのままの状態で移動する建築工法)され横浜アイランドタワーの低層部に組み込まれた際の施工に携わっています

 

1階ではほかにも、さまざまなクリエイターの工芸品を展示・販売。多くの工芸品が、リユースやアップサイクルの理念を体現したものでした。また、グランドオープン記念として、この建物が作られた明治時代に初めて横浜港から輸出され欧米で人気を博したという「オールドノリタケ展」が開催されていました。ワークショップも定期的に実施し、横浜クラフトウィークや子ども向けのものづくりスクールといったイベントも開催していくそうです。

高い天井に豪華な意匠が印象的な1階。花や木を使ったパフォーマンスも行われました

 

3階ラウンジからは1階と港側の風景を見渡すことができます。本棚やドリンクも

 

地下1階・2階・3階の「goodroom lounge 横浜馬車道」には、入居している企業や個人の個室や会議室だけでなく、ドロップイン利用ができるスペースや交流ラウンジも。開放的で温かい雰囲気の場づくりがされていて、ここから今後どんな活動や作品・商品が生まれていくのか楽しみですね。

 

横浜港を目の前にした抜群の立地。正面入口の上の2・3階部分のバルコニーにも漁網を使ったアート作品が展示されていました

 

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BankPark YOKOHAMA

https://bankparkyokohama.jp/

イワミズアサコさん

https://www.asakoapa.com/

 

めぐる布市出口を広げるプロジェクト2025

〈お問合せ〉

認定特定非営利活動法人 森ノオト

ファクトリー事業部(担当:齋藤)

factory@morinooto.jp

 

 

【この活動は、地球環境基金の助成を受けています】

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