布の循環量を増やし、リユース品を活用する人を増やすために取り組む「めぐる布市」出口を広げるプロジェクトの2年目。今回ご紹介するのは、「NPO法人らいちょうKAPWA福祉作業所」さんの活用事例です。
NPO法人らいちょうは、2017年に設立され横浜市青葉区内で障がいのある方が通う福祉作業所を運営し、障害福祉サービスとして日中支援事業を行っている法人です。青葉区内に生活介護や就労継続支援B型等の3カ所の作業所を持ち、障がいのある方が充実した生活を送るためのサポートをしています。
今回取材に訪れたのは市が尾駅から徒歩15分ほどの閑静な住宅街荏田西地区にある「KAPWA福祉作業所」です。静かな住宅街の中でも、ひときわ大きな敷地にゆったりと建つ庭付きの大きな一軒家を作業所としています。
KAPWAには、20代から60代までと幅広い年齢層の障がいのある方(以下、利用者さん)が20名ほど通われていて、受注作業や余暇活動等をして過ごしているそうです。
中に入ると広々とした玄関ホールを中心に左右二つの部屋に分かれており、
左側の大きな部屋では受注作業を、右側の和室で「アート活動」が行われていました。
週に1回の「アート活動」の時間では、余暇活動として、裁縫をしたり、絵を描いたり、商品につながる作品の制作などをしているそうです。
お話を聞かせてくれたのは、KAPWAの管理者である鈴木さんと、アート活動を担当している手島さんです。
KAPWAの管理者の鈴木さん
アート活動をしている作業室には、いたるところに素材がたくさん置かれ、作りかけのものや、出来上がったオブジェなどが飾られていて、何かものを作りたくなるような雰囲気のお部屋です。
この日の「アート活動」に参加していたのは4名。それぞれもくもくと制作に取り掛かっていました。
アート活動担当の手島さん
何度かめぐる布市にもアート活動で使う材料を探しに買い物に来ており、そこでこの出口プロジェクトを知り、今回の応募に至ったそうです
出口プロジェクトに応募する前は、手持ちの布や古着等を素材として活用したり、100円ショップで布を購入したりしていたそうです。もっとたくさんの素材や材料があればいいなと思っていた時に、ちょうどこのプロジェクトを知り、地域とのつながりを広げるためにも、是非応募したいと思ったそうです。
部屋に入ると、利用者さんが作業をしている机の上には、目を惹く個性的な絵がずらりと並んでいました。
並んでいる絵を見ているだけでも楽しくなる机の上です
いろんな利用者さんが描いた絵を表紙に使い、紙の束を刺繍糸で綴じてKAPWAオリジナルのノートを手作りしているところでした。この刺繍糸は出口プロジェクトの刺繍糸を使い、いろんな色の糸で綴じているのも可愛いさのポイントになっていました。
見開きにした紙に等間隔に目打ちで穴をあけ、針と刺繍糸を通して綴じていきます。ひとつひとつ丁寧に作られていました
ノートの表紙に使っている紙は、普段作業所に送られてくる段ボールをリサイクルしているそうで、「段ボールを水やお湯にひたすと、するっと表面の紙が外れるんです。そのコツをつかんで紙を剥がして再利用して使っています。」と鈴木さんが教えてくれました。
どうりで、新しい紙にはない折り皺やノリの跡があり、ザラっとした肌触りの紙でした。それぞれに風合いが異なっているので、買う人も選ぶのが楽しいだろうなぁと感じます。
そんな段ボールの紙に利用者さんの個性あふれる絵が加わり、それを色とりどりの刺繍糸で綴じて、世界に1冊だけの個性豊かなノートに仕上げていました。
このノートは、藤が丘駅前にあるらいちょうが運営するアンテナショップ「Sari-Sari」で売られており、人気商品の一つだとか。一つ一つの工程に手間と時間をかけ、複数の手を経て丁寧に作られている素敵な商品です。
可愛くて、ついつい私が購入したノートやメモ帳。右下にある小さなメモ帳に描かれているのはなんと「うな丼」。思わずズッコケたくなるユルさです。
その向かい側で作業をしていたのは、ノートを刺繍糸で綴じていた若い女性の利用者さん。こちらは、スナップボタンをブルーの布にひたすら縫い付けて黙々と作業をしています。
スナップボタンを隙間なく縫いつけています
何を作っているのかを聞いてみると、全面にスナップボタンを縫いつけたバッグを制作中なのだとか。
布市には、たくさんの古いスナップボタンが寄付されてくるのですが、使い道があまりなく、余りがちでした。そんな話を聞き、手島さんがスナップボタンの使い道を考え、スナップを全面に縫い付けてバッグを作ったら面白そう!と思いつき、集中力のいる作業が得意な利用者さんに縫い付けをお願いしたのだそうです。これは、仕上がるのがとても楽しみな一品です。
隣の机で、目の前に刺繍糸が沢山入った箱を置いて、小さな布に刺繍を施していたのは、このアートの時間に制作をするのが初めてという女性の利用者さん。
鮮やかなピンク色の布に小さな刺繍枠をはめてゆっくりと丁寧に刺繍をしています。
優し気な色の刺繍糸の組み合わせと、味わいあるフォルムの並縫いがなんとも愛らしく、制作している彼女の雰囲気とぴったりでした
「できるだけ、利用者さんがやれることを生かして、そのありのままのやり方や表現を大事にしたい」と話す手島さん。
コースターを作っていた彼女は、取材中に「材料をいっぱいもらえてうれしい!」と笑顔で話してくれ、なんだかこちらもうれしい気持ちになりました
つくり手にとって素材が豊富にあるということは、心も浮き立ち、つくる楽しみや意欲が湧いたり、想像力を掻き立ててくれるものと改めて感じた場面でした。
出口プロジェクトの寄付の素材の中には、帯もありました。
どんなふうに活用しているかというと…。
利用者さんが、裂き織でつくった小さな織物をいくつか寄せあつめて青い布に縫いつけ、それをさらに帯に縫い付けて作品をつくっていました。
裂き織りとは、江戸時代の東北地方で生まれた生活の知恵で、古くなった布を裂いて紐状にし、織り物の材料として使うことで新たな用途に生かすという、昔ながらのエコロジーな技法です。
KAPWAでは、Tシャツや古着を細く裂いた布や、毛糸などを使って、裂き織りのコースターを作っているそうです。
ゆるめに織られていたコースターをいくつか組み合わせてミシンで帯に縫いつけようとしたところ、それらを制作した利用者さんが「自分がやる」と言って手縫いで縫いつけていました。縫い方もダイナミックで、途中で裏側の糸が絡まっていましたが、それがなんともいえない自由な雰囲気を醸し出して面白く、他の人には真似のできない力強くてカッコイイ縫い方でした。
この裂き織コースターを制作している方は、2024年秋に開催された「かながわ障がい者 ともいきアート展」で賞をいただいたそうです
この日も帯の作品に手をつける前は、クリスマスツリーの刺繍をしていました。糸の塊も作品のアクセントとなるような大胆な縫い方が潔く、「楽しい」と言って刺繍をしている姿がとても印象的でした。
赤い布にクリスマスツリーを刺繍。その左にある黄色い布は、古着の袖を開いたものだそうです。出口プロジェクトで素材をたくさん寄付してもらう前は、古着などにも刺繍をしていたとか
次に鈴木さんが引出しから出してくれたのは、オリジナリティあふれるクリスマスグッズです。
オリジナリティあふれるクリスマスリース
中身が見えるオーガンジーの布に腸詰のように詰められていたのは、ふわふわした綿のようなものや、裂き織で出る余りのカラフルな糸等です。
ふわふわした綿のようなものは、実は毛糸をほぐしたものだそうで、撚(よ)れている毛糸をほぐすのが好きという利用者さんがいたそうです。
そのほぐされて可愛くなったふわふわの毛糸を、可愛いものが大好きという別の利用者さんに渡して、オーガンジーの布に詰める作業をしてもらい、それを何にしていこうかと手島さんが一緒に考えて、利用者さんにキラキラしたスパンコールなどを縫い付けてもらい、仕上げをしたそうです。
こんな風にくるくる巻いた独特なクリスマスグッズは見かけたことがなく、商品が出来上がるまでの過程自体も興味深く、アイディアがユニークで素敵な1品ばかりでした。
作業机に目をやると、これまた中身が見えるオーガンジーにさまざまな素材が詰めた制作途中の人形が置かれていました。
この日、この人形を作った制作者は活動していませんでしたが、クリスマスグッズにほぐした毛糸を詰めていた方の作品だそうです。
制作途中の人形には、ほぐした毛糸や素材のハギレなどが詰まっています
手島さんは、裂き織を作る工程で最後に出る縦糸のあまりが、色とりどりとてもきれいなので捨てるのがもったいないと箱に集めて取っているそうです。捨てられてしまうであろう余りの糸たちも、こうして大切にとっておき、のちに作品の素材として息を吹き返していました。
今度は手ぬい糸がパンパンに詰まったビニール袋からたくさんの糸を取り出して「出口プロジェクトの寄付で頂いた糸が、どれも可愛いんですよ!これなんてこんな小さな木片に糸を巻いていて、とっても可愛らしくて。」と手島さんが嬉しそうに話してくれ、なんだかこちらまでほっこりと温かい気持ちになりました。
年代モノでレトロな雰囲気の絹糸やら木綿糸、使いかけの糸や、絵が描かれた小さな木片に巻いてある糸など、どれも不揃いながらも個性豊かな糸たちです。
布市に寄付されてくる布や手芸用品には、それぞれに物語があるようで、誰がどんなものをつくろうとしていたのだろう…と想像するのも楽しいものです
KAPWA福祉作業所の「アートの時間」では、めぐりめぐって手元に届いた様々な素材に対しても、愛あるまなざしを向け、利用者さん達の個性豊かな表現と共にクリエイティブな発想力を持って作品や商品といった形にしていました。
見せてもらった制作中の作品達には、どれにも小さな物語があるようで、誰にでも作れるようなものではなく、その人だからこそ作れる作品や商品がここでは作られていて、見ているとお宝を見つけた時のように、つい心がおどってしまうような感覚になりました。きっとそれは、つくる人の個性や素材の個性をも大事に考え、良さを活かそうとする柔軟な発想力と創意工夫があるからこそ生まれてきているものなのだと思います。
手島さんは、この時間を「利用者さんたちが楽しく、個性が形になって、ありのままの姿で表現活動をしてくれる場でありたいと思います。作品や商品などのカタチになってもならなくても、その人なりの表現ができていれば良いなと思っているんです。今後も寄付して頂いた素材を活用して、利用者さんたちの個性あふれる作品を楽しみながら生み出していきたいです」と話してくれました。
管理者の鈴木さんは、「想像以上にたくさんの素材を提供していただき、利用者さんもワクワク感が増して楽しくアートの時間で制作できています。アートを通してそれぞれが才能を開花して、美術展で賞をもらったり、とてもいい経験ができたと思います。商品になったり、ならなくてもそれが喜びにつながっていると感じています。
最近は、イベントがあった時などに商品を持って行くなど、活動を知ってもらう機会が増えてきているので、地域の人にも知ってもらえればと思っています。」と話してくれました。
KAPWA福祉作業所のアートの時間での取り組みは、目の前にあるものを丁寧に見つめ、それぞれの‘良さ’や‘好き’といった個性をどうやったらうまく活かせるかと、創意工夫と手間を惜しまないモノづくりをしていました。
布市からめぐっていった素材たちは、これからもそうやってステキなものへと形を変えて、めぐっていくのでしょう。
(最後のおまけ)
KAPWA福祉作業所と同じNPO法人らいちょうが運営している「ARAW福祉作業所」でも、アートの時間があるそうです。
今回取材には行っていませんが、出口プロジェクトの素材を使い、織物等をして商品の制作をしているそうなので少しだけ写真でご紹介します。
……
こちらは出口プロジェクトの毛糸を使い織物を制作しています。木の織機は、木工の先生の手作りだとか
アクリル絵具で紙ストローを塗るのが好きという利用者さんが塗ったカラフルなストローを毛糸で紐通し。ストローを絵具で塗るのが好きな利用者さんは、画用紙には絵具を塗らないそうですが、ストローなら塗るようです。
「好きを貫く」
紙に書いて貼っておきたいような言葉です
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NPO法人らいちょう 福祉作業所KAPWA
めぐる布市出口を広げるプロジェクト2024
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ファクトリー事業部(担当:齋藤)
【この活動は、地球環境基金の助成を受けています】
布の循環量を増やし、リユース品を活用する人を増やすために取り組む「めぐる布市」出口を広げるプロジェクトの2年目。今回ご紹介するのは、UPBEATDAY(アップビートデイ)の活用事例です。
ファッションショーに参加した子どもたち
UPBEATDAYは、横浜市泉区を拠点に子どもたちが主役になれる活動をとの思いで、廃棄される洋服をリメイクしたエシカルなファッションショーを企画しました。
主体となったのは、学校に行きづらい子をもつ親の会「はぴねす」代表の相澤由佳里さんと、子ども食堂がじゅまるを主宰する中村葵さん。めぐる布市の資材をどのように活用したのか、相澤さんに伺いました。
ことのはじまりは、相澤さんが知人から、廃棄されるという新品の洋服を譲り受けたこと。中国産の洋服で、知人が販売用に輸入したものの、縫製やボタン位置などが規格外で販売できないものだったのだそう。ちょうどその頃、知人にめぐる布市のことを教えてもらい、手芸用品をいただけたら洋服のリメイクに活用できるのではと、出口プロジェクトに応募したのだそうです。
相澤さんはめぐる布市の工房を訪れた時のことを「いろんな素材にふれる中で、私自身がすごくテンションが上がりました。いただいた洋服とさまざまな布たちを組み合わせたら、楽しいことになる!と思ったんです」と振り返ります。
カーテンレースやリボンレース、ファー素材やハギレ、ビーズなどを譲り受け、ファッションに興味のある若者たちを集って洋服のリメイクを始めました。縫い物が得意な子や、ファッションショーに出たいという子ら、小学生から高校生までの子たちが参加。最初は、新品の洋服を見て「どうしよう」と言っていた子たちも、相澤さんの知人のデザイナーさんからアドバイスを受けながら、洋服を切ったり縫ったりして手を動かしていきました。洋服にハサミを入れることに躊躇していた子に、大人が「失敗してもよいからやっちゃいなよ!」と明るく声をかけられ、思ったようにやってみて最後には「すごいかわいいのができちゃった」と喜んでいたそうです。「子どもたちの心がとても動いたのを感じました」と相澤さんは目を細めます。
めぐる布市のレース資材などを組み合わせてリメイクした洋服たち
横浜市立戸塚高校定時制の家庭部の生徒たちにも協力してもらい、相澤さんと中村さんは部活動の様子を見に行きました。女子生徒だけでなく、男子の部員もいて、衣装に合うチョーカーをつけたいと、資材の中から必死に探して工夫していたそうです。「真剣なまなざしが印象的で、こうやって真摯にものに向き合ったものづくりをすることで、もっとこうしていきたいという希望につながっていくと感じました」と相澤さん。
いずみ中央駅前まあるい芝生の広場ファッショショーの様子
10月にいずみ中央駅前まあるい芝生の広場での「みんなの絵本のおうち」主催のイベントに参加し、サスティナブルファッションショーを開催しました。白いドレスにカーテンレースで水玉やお花をあしらったり、カーテンでマーガレットを作成したり。白いワンピースを上下に分けてスカート部分にピンクのレースを足して、かわいらしく仕上げたのは女子高校生女子がデザイン・縫製を担当したもの。初めてメイクをしたモデルさんはとても喜んで「やみつきになりそう」と話していたそうです。
12月には、和泉中央地区ふるさと祭りの舞台にファッションショーで参加しました。前回よりもずっと多くの人の中でのステージで、寒さもあったので「もっとうまくやれるのに悔しい」という子もいたのだそう。次はどうしたら洋服をもっとかわいらしく見せられるか、もっと上手くやりたいという子どもたちの気持ちに相澤さんは感激したと言います。
いずみ中央地区ふるさと祭りでの様子
めぐる布市の資材を活用した、洋服のリメイクとファッションショーの企画を通して、相澤さんは
「ものの命は、つながっていくことで輝きを増していくと感じました。そのままだったら捨てられたかもしれないものを、使おうという人がいて、それをすくいあげて発信する。思ってもみなかった形のもの変わっていく。今、たくさんのものにあふれていて、ものの命を感じること難しくなっていると感じます。自分が手に取ったものに、命があると意識を向けることは、自分自身の命を大切にすることにつながっていくのではないかと思います」と語ります。
3月22日には、泉区のショッピングモール「ゆめが丘ソラトス」でファッションイベントを開くそうです。着なくなった洋服を持参して交換する、地域の「おさがりポスト」の洋服交換会とともに、UPBEATDAYは制作した衣装展示や活動紹介をする予定だそうです。
若者たちが心と手を動かし、洋服たちや手芸用品に命が吹き込まれる。ファッションショーの形で携わりその子自身が輝いていく。ものづくりを介した心弾むUPBEATDAYのプロジェクトに、めぐる布市もコラボレーションできたことをうれしく思います。
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UPBEATDAY(アップビートデイ)
Instagram @upbeat_day2024
めぐる布市出口を広げるプロジェクト2024
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布の循環量を増やし、リユース品を活用する人を増やすために取り組む「めぐる布市」出口を広げるプロジェクトの2年目。今回ご紹介するのは、南河内プラッツ親の会さんの活用事例です。お話を伺うと、めぐる布市の資材が、私たちの想像を超える活動や発見を生み出していることがわかってきました。
南河内プラッツのスタッフ浅井紀久子さん(左)、親の会を手伝う小川さん
南河内プラッツは、大阪府南部の河内長野市で、“ひきこもりの相談と居場所”の支援拠点として活動しています。運営するのは、30年以上にわたってひきこもりやニート(若年無業者など)や不登校と呼ばれる若者とその家族を支援しているNPO法人淡路プラッツです。南河内プラッツはその2拠点目として、2012年に開所しました。主な活動は、個別面談、若者の居場所、親の会、親御さん向けセミナーの4つです。
南河内プラッツの外観。2023年にここに移転した
今回お申し込みいただいた親の会は、南河内プラッツに個別面談に来ていたり、お子さんが「居場所」に通っていたり、親御さん同士のつながりを持ちたい、誰かに話を聞いてほしいなどの親御さんによる会です。月1回集まって、それぞれの家庭の話をしたり、感想や助言などを伝えあったりしています。お子さんが南河内プラッツを利用していなくても、親の会のみの参加もできます。
「子どもさんのことを、自分の友達に話しても共感を得られない。「大変だね」と言ってもらっても、それ以上の言葉が出てこない。相手が戸惑って場がしらけてしまい、そこにいるのがつらい。そんな親御さんが先日初めてここへ来て『皆さんに聞いていただけてうれしかったし、心強かった』とおっしゃっていました」と、親の会のお手伝いをしている小川さんは話します。
小川さんは以前、お子さんとともに南河内プラッツを利用していましたが、現在お子さんは卒業し、結婚して独立されています。当時「元気になって外へ出て行かれた方のお話が聞きたかった」という思いがあった小川さんは、今も親の会に関わり続けています。
親の会初期メンバーが以前から気になっていたのが、毎月の会が終わった後「もう少し誰かとしゃべりたい」「家に帰りづらい」という様子を見せる親御さんがいたことでした。個別に聞きたいことのある人もいるかもしれません。
南河内プラッツは2023年に移転して広くなり、親の会がスペースを使える時間にも余裕ができました。小川さんは親御さんたちが残って話しやすいよう、縫い物をしながら話したり、ちょっとした講座を開いたりしてはどうかと考えたのです。
「子どもさんが引きこもってしまうと、親御さんも引きこもりがちになり、周りの人がキラキラして見えることも多いです。ここで講座があって、みんなと一緒に何か一生懸命作ったら、その間だけでもつらいことが忘れられるのではないか、次の1ヶ月もなんとか過ごせるのではないかと思ったのです」(小川さん)
小川さん自身、裁縫で小物を作るのが好きでした。そんなとき、裁縫仲間から「めぐる布市」のことを教えてもらい、プロジェクトを知って応募したのです。
これまで小川さんたちは「めぐる布市」の資材を、次のようなことに活用してきました。
・南河内プラッツのイベント「オープンプラッツ」で建物内を飾るガーランド、バザーに出品する猫の首輪を製作。
ガーランド
クリスマスツリーの壁面装飾
飴ちゃん袋とカード
・リメイク缶・小鳥の壁面装飾 空き缶を、小物やお菓子などを入れられるおしゃれな缶にリメイク。布や毛糸などを使って缶を装飾した。また、新聞紙と布、リボン、ボタンなどを使って小鳥を作り、リメイク缶とともに壁面装飾に仕上げた。
新聞紙で作った木に飾り付けた
さまざまな缶と小鳥
親の会での活動はまだ始まったばかりではありますが、こうした活動を通して、いろいろなことが見えてきています。
「居場所」では普段、ボードゲームや外食といったイベントのほか、若者がいろいろな人と交流できる活動も行うようにしています。
その一つが「オープンプラッツ」。南河内プラッツに通う若者たちやスタッフが、料理やお酒などで、地域の人や関係者をもてなすものです。
その当日の飾り付けや販売用のガーランドを、親の会と居場所の若者たちが協力して作りました。まず親の会で布を三角に切っておき、若者たちがそれをひもにつけて仕上げていったのです。居場所での作業当日は、小川さんが訪れて作り方を教えました。
ガーランド製作の様子
南河内プラッツのスタッフである浅井紀久子さんは「親の会の方々が居場所に来て教えてくれるだけで、若者たちにとっては一つの刺激になります。何もないのに交流するのは、若者にとってやはりハードルが高いですが、この日はわいわい言いながら作業をして、その後に一緒にお茶を飲み、自然と交流の場が生まれました」と話します。
小川さんも、若者たちと社会の間に親の会や地域で見守る方々のような存在が入ることで「社会は怖い人ばかりじゃない」と伝えたいといいます。また親の会にいる親御さんにとっても、居場所の若者たちと関わることで、自分の子どもへの声の掛け方に気付けたりもします。
クリスマスの壁面装飾を作るときにも、親の会だけでなく、居場所の若者も制作しました。「『飴ちゃん袋」を持ち帰った親御さんからは、中身を食べた後、また袋に飴を補充して食べていると教えてもらいました。』と浅井さん。「カードの言葉もあわせて、応援している私たちの気持ちがちょっと届いたかな、よかったなと思います」と小川さん。
親の会には小川さん以外にも、洋裁学校出身の方や洋服のパタンナーをしていた方がいることもわかりました。親御さんにとっても、布市の資材を使うことで特技を生かした活動ができそうです。
親の会では今後、猫の首輪を保護猫団体などに寄付できないかと考えています。また、壁面装飾制作の経験を活かし、地域の病院の壁面装飾のお手伝いができないかとも考えています。そこには、売上を立ててプラッツの運営に充てることよりも大切なことがあると小川さんは考えています。
「誰かの役に立って『ありがとう』と言ってもらえる機会を若者に、そして親御さんにも提供していくことで、それが自信につながっていけばいいなと思うのです」(小川さん)
「出口を広げるプロジェクト」の参加団体に送られる資材は、さまざまな布に加え、チャックやボタン、毛糸などの手芸用品もあります。それらが段ボールに何箱分も届きます。
さまざまな種類で、まとまった量があるという特徴を持つ資材が、さまざまな活動や発見のきっかけになっていると小川さんは話します。
・関わる人が遠慮なく使える
親の会に参加する親御さんの家庭状況、経済状況はさまざまです。その中の誰かが寄付した布ではなく、めぐる布市から送られた布であることが、小さいけれど重要なことだと小川さんはいいます。「みんなが心から喜べました。まず「めぐる布市」からいただいて基盤ができたことで、今後誰かからの寄付があったときにも、遠慮なく使えることにつながっていくと思います」。
・失敗できる
布市から送られた資材は段ボール3箱。居場所の若者たちがものづくりに挑戦するときには「失敗しても大丈夫だよ、まだこんなにあるからね」と声をかけることができます。
また親の会に参加する親御さんも、より気楽に「これに使おう」と提案することができます。
・布だからこそ、多様で作り替えられる
「めぐる布市」から送られる布は、色や柄、手触りなどもさまざま。さらにチャックや毛糸などの素材もあり「想像が広がっていく」と小川さんは話します。
また、例えば壁面装飾に使った布は、糸を解けばまた別のものに使えます。
こうした特徴は、紙などにはない、布ならではのものです。
小鳥製作の様子
・自分の好きなものに気付く
ガーランドを作るときには、居場所の若者たちが、親の会で作ったたくさんの三角の布の中から選んで、一本のひもにつけていきました。
「めぐる布市」の布は、色や柄、素材などもバラバラです。若者たちの中には、あえてバラバラの色や模様でポップな感じにする人もいれば、同じような模様を並べてかっこいい感じにする人、色のグラデーションを作る人もいました。
それは若者たちの「自己表現になっている」と浅井さんは話します。0から何かをつくることは難しい、手作りキットだと作り方が決まってしまっている。それに対して「めぐる布市」の資材は、材料はあるけれど好きにつくれる部分が大きく、形のないところから自分を表現するものができていくのです。
リメイク缶製作の様子
さまざまな缶ができ上がった
小川さんも「若者たちに「何が好き?」と聞いても、答えが出にくいことがあります。他人を意識しすぎて、自分が何が好きかもわからなくなっているのかもしれません。安全でフラットな状態で選べる場があることで、今まで知らなかった自分に気付くこともあると思います」といいます。本人だけでなく周りの人も、できあがったものを見ることで、お互いに相手をより理解することにつながるようです。
・活動の後押しになる
「こんなにたくさんいただいたから何かしないとね」と、プレッシャーにならない程度に、活動を後押しする存在にもなっているそうです。
・あるものから選ぶ
たくさんの資材といっても、何でもあるわけではありません。「あるものの中で作る」という経験も大切だと小川さんは考えています。「自分たちも、あるものの中でしか生きていけないですよね」。
ギャザー入りのレースを小鳥の羽や尾などに活用
「めぐる布市」からの段ボール箱を開けた親の会の方々が驚いたのが、そこに入っていた「編みかけのセーター」でした。それは白と紺の毛糸が棒針で途中まで編まれたもので、編み終わりの処理はされておらず、ほどけないようにするクリップがついたままでした。
編みかけのセーター
実は小川さんたちは資材が送られる前、「めぐる布市」のスタッフに「どんなものでもいいので」と話していました。
「これが入っているのを見たとき『あ、託されたな』と思ったのです。私たちがこの子を何とかしてくれるんじゃないかと思って、送っていただいたのではないかと。」(小川さん)
小川さんは「何かに使ってあげよう」と考えた末、壁面装飾を作るとき、クリスマスツリーの植木鉢としてそのセーターを使いました。見た人も、編みかけのセーターだったと知ると驚いていたそうです。
編みかけのセーターは左のツリーの鉢。右のツリーの鉢には着物の帯を使った
「人からはゴミに見えたり、『わあ大変』と思われるようなものでも、こんな風に使えば主役級の活躍をするんだと、若者たちに思ってもらえたらいいなと思いながら作っていました。
ここには、形になっていない若者たちがやってきます。それをスタッフの人たちが、何かで活かそうとしてくれているのです。
私たちも若者たちもきっちりとした四角い布ではなくて、いろいろな裁断面を持っているように思います。その形を活かすと、活躍できる場があると思うのです。
私としては、この編みかけのセーターが今回一番活躍したと思いますし、一番うれしかったです。布市にこのセーターを託された方にも、このことを伝えたいですね。」
今は親の会に裁縫の得意な参加者が多いですが、時間が経つと、親の会の参加者も居場所のメンバーも変化していきます。「そのときに応じたことができればいいし、そのときの一番いい形で、若者の力を引き出すのにつながることを親の会でも考えたい」と小川さんは話します。
浅井さんも「若者といろいろな経験をしていきたいです。その中でいろいろな方と交流できると、若者にとっていい刺激になります。いただいた資材を、みんながより動きやすくなるような活動に使わせていただけたらなと思います」といいます。
お話を伺って、「めぐる布市」の資材にこれほど大きな力があることに驚きました。自然な交流を生む。人の活力を引き出す。自分を表現して「好き」を見つける。そして、あるものから選ぶことで素敵なものができあがること、きれいな形ではないものも活かせば素晴らしいものになることなど、人生に通じることを気付かせてくれます。編みかけのセーターが捨てられずにめぐり、活かされるとは思いもよりませんでした。それは大げさに言えば、人を救ったり、人生を変えたりすることにもつながります。
誰かの家で眠っていた布が、これだけ大きな力を持つものになる。南河内プラッツさんでの活動は、「めぐる布市」の意味をはっきりと伝えてくださるものでもありました。
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NPO法人青少年自立支援施設淡路プラッツ 南河内プラッツ 親の会
HP:https://www.awajiplatz.com/
めぐる布市出口を広げるプロジェクト2024
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ファクトリー事業部(担当:齋藤)
【この活動は、地球環境基金の助成を受けています】
横浜市緑区十日市場町にある[不登校のための学びの場所 COMETセミナー]です。2023年の11月に「自分のペースで、自分らしく学べる」ことをモットーに開室したフリースクールです。
そして今年度、めぐる布市さんの「出口を広げるプロジェクト」に参加させていただきました。
参加した理由は大きく二つありました。
「毛糸と枝でオブジェを作るよ」とお話をしたら、近所の公園や林から子どもたちが枝をたっぷりと拾って持って来てくれました。毛糸や枝の手触りも楽しかったです。
一つ目は「めぐる布市」さんの「めぐる」というコンセプトに共感し、惹かれたことです。
地域の中のめぐり、広く見ると、この地球の中でのめぐりの中に私たちがいることを、このプロジェクトに参加することで、COMETセミナーに通っている子どもたちや保護者の方々に体感してもらえるきっかけになればと思いました。
不登校になると、多くの保護者も子どもが最初に感じるのは、拠り所のなさです。
学校という居場所から離れたとき、お家の中にいる子どもたちもそれを見守る保護者も、ふと、どこにも自分がつながっていないような、ポツンと取り残されているような、不安と孤独を感じてしまう場合があります。
学校以外に、地域や、さらには世界の中にはもしかしたら、今こうしている間もつながっているところ、そしてこれからつながれる場所があるかもしれないと、少し角度を変えて見ることのできるような出会いがあることを感じてもらえるきっかけがあればという願いがありました。
中学2年生と小学5年生、お互いのアイディアや作品を「わあ、それいいね!」と認め合いながら、それぞれの好みや工夫によって世界で一つの作品が仕上がっていく。
会ったことのない方々が思いを寄せて寄付された布たちを、めぐる布市のスタッフさんの手が受け取り整え、そして今回、私たちが「こんな活動に使ってみたい」という希望を一つ一つ読み、思いを巡らせて素材を丁寧に選び、教室へ送ってくれました。そして、それを子どもたちの手が受け取ることができました。
このめぐりは、暮らしの中で、今、目の前にあることや、目の前にいる人以外の思いや善意を受け取り、託されていることを感じる大切なきっかけとなりました。
誰ともつながっていないなんていうことはない、大きなめぐりの中に一人一人がいるのだという言葉なき、ぬくもりのあるメッセージとなりました。
思いもかけない素材の組み合わせを大胆にする男の子たちの作品は見ている方もワクワクします。この作品は妹へのプレゼントでした。お迎えにきた妹が嬉しそうに手に提げて帰る様子が微笑ましかったです。
二つ目は、ものづくりを大切に考えているCOMETセミナーの活動にとって、少しでも使うことのできる素材をいただけるのであれば大変助かるということでした。
素材というところでは、実は最初に少し難しい場面もありました。
COMETセミナーは本格的に始動してからまだ1年が経っていませんでしたので、スタッフも手探りの挑戦をしている真っ只中でもありました。
その中での今回のプロジェクトの参加は期待と同時に分けていただいた素材を目の前にした時、さてCOMETセミナーが活かしきれるだろうかという不安が湧きました。
というのは、思えば、私たちが手にしたことのある布や手芸用品というのは今まで新品しかありませんでした。
そしてまた、自分が好んで選んだ布や毛糸で作品を作ったことばかりでした。
けれども、当然のことですが、寄付でいただいた布というのは真新しいというものとは限りません。
ときには布に経年によるシミがあるものがあるものや、自分では選ばない柄物や色も含まれています。
「家族へのプレゼントにする!」と作品を作る子も多いです。作品がお家に飾られることを思うと暖かな気持ちになります。
送っていただいたたくさんの素材を眺めながら、ワクワクする気持ちと同時に、せっかくいただいたのに、使いきれないかも、使いこなせないかも、という心配が湧き上がりました。
子どもたちにどんな風にこの素材を手渡し、どのように新しい作品を生み出してもらうか、それが子どもたちにとって、リユースというサイクルとの最初の出会いだとしたら、良い時間を過ごしてほしい、いろいろな思いが渦巻いていました。
この不安を伝えて良いものか迷いましたが、思い切って布市の事務局に、相談することにしました。
COMETセミナーの姉妹教室「放課後等デイサービス星の広場」にもおすそ分けさせていただきました。星の広場でも布や毛糸は大活躍でした。写真はお正月飾りです。布を細長くピンキングはさみで切り、円形のワイヤーにくくりつけ、最後に縁起物を飾り付けています。布の柄を植物で統一したり、色の組み合わせを考えたりしていました。
すると、事務局の皆さんが相談に乗ってくれました。
COMETセミナーも一度どのような場所なのか見たいと言っていただき、教室で実際に布や手芸用品を前にアドバイスをいただく時間をとっていただくことができたのです。
これは本当にありがたかったです。
まずは、古布に対する扱いに慣れているというところが私たちとは全然違いました。
古布とはそういうもの、という目線で布を前にしていると自由な発想になることが分かりました。
例えば、「あ、シミがあるなあ」と思った布も、布市のスタッフさんは「ここを切ってしまえば、こっちは使えるね」と軽やかに言って使えるものとしての見方を教えてくれます。
また、一枚として見るというより、そこからさらに柄の部分だけ切り抜いてみたり、割いてみたり、刻んでみたりと、
アドバイスをもらっているうちに、古布だからこそのびのびと使ってしまえるのだな!と心がどんどん軽くなりました。
「自由に使ってね」と、素材をテーブルに置いておいたら、折り紙とビーズ、そしてフェルトを組み合わせてオーナメントを作っていました。子どもの発想にいつもびっくり!
そして何より、スタッフの方々の柔軟な雰囲気にこちらの緊張も解けて、それこそ「めぐり」が良くなって行くのを体感するのでした。
ここにあるものだけでなく、子どもたちの家庭に眠っている布たちも持ってきてもらっても良いのでは?というアドバイスもとても貴重なものとなりました。
そのような時間を経て、ご家庭には布市の出口を広げるプロジェクトに参加していることをお伝えし、布や手芸用品の寄付を呼びかけてみました。
お母さんたちはまず、「布市」の可愛いハガキを手にして「私、そういえば手芸とか大好きだったんです!久しぶりに思い出しました。今度娘と布市、行ってみようかな」と笑顔になってくれました。
「きっかけ」、特に新しい場所や新しい興味との出会いは不登校の子どもやご家庭にはとても大事なものだと思っているので、もうその時点で、このプロジェクトに参加してよかったとさえ思えました。
また、布を持って来てくれたお母さんは「幼稚園のバックを作った布の余りで、いつか使おうって思ってとっておいたけれど、いつの間にか中学2年生になってた!もうさすがにこんなに可愛い柄で何かを作ることもないなって、今回のきっかけで布を整理して思って。なんだか子ども成長を感じてしまいました」と懐かしそうに布を見ながら話してくれました。
ものづくりをしている子どもたちの手は見ていて飽きません。
さて、布市のスタッフさんにアドバイスをもらったり、スタッフ内でアイディアを集めたり、保護者の方の寄付も合わせたりと準備が整い、秋からいよいよいただいた素材をメインにものづくりの活動を始めました。
始めてみると、「少し地味な色が多いかな」「見たこともない柄かな」などというこちらのかすかな不安をよそに、
「この色素敵!」「この触り心地面白い」「わ!こんなに毛糸がある!」など、子どもたちはそれをリユースということさえ軽々と飛び越えて新しい素材との出会いとしてすんなりと受け止めていくのでした。
プロジェクトのことも伝えながら活動をすることで、一度は人の手を離れたものが、みんなの手の中で形になっていくことの不思議さ、素敵さを体感してもらえたと思います。
ガーランドにも、それぞれ思いがけない工夫が。いただいた素材の中でも、みんなが「お宝発見!」と飛びついていたヒヨコの鈴がここで活かされるとは!
ものづくりをするときの子どもたちの目の力や、手のしなやかさはこの仕事をしているなかでも特に心を掴まれるものです。
布や毛糸、素材を前に、子どもたちは自分の作りたいもののイメージを膨らませて、自分の感覚を頼りに、それらを選びます。自分で選ぶということは実は難しい子どももいます。
それは少し自信をなくしているためでもあったり、学校の中では決まった時間の中でこなさなければならないというプレシャーによる習慣によるものである場合もあります。
ですが、ここでは子どもが自分で選ぶことを待つことができます。
作ることも大事ですが、まずは自分が好きなものを自分で選ぶということがものの「すると活動を重ねるごとに、その子は選ぶ時間が短くなっていきました。そして不安そうに素材に手を伸ばしていた最初のころとは見違えるように、積極的に自信を持って選んでいる様子です。
会ったことのない人とも私たちはきっとどこかで繋がっていて、今日という日を過ごしていることを今回のプロジェクトに参加する中で、布や毛糸と一緒に子どもたちに手渡せていたら嬉しいです
活動は続けていくほどに意味が深まっていくと思います。この度、この布市さんの未来を見据えた活動の中に子どもたちと参加することができたことは、子どもたちの胸の内に、つながりやめぐり、そして未来を見つめる種を蒔く時間をいただいたことでした。この種をこれからも継続する活動の中で、育てていくことが私たちの希望です。そしてまた、布市さんの活動も子どもたちとこれからも楽しみにしています。
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「自分らしく学べる場所 COMETセミナー」
住所 226-0025 横浜市緑区十日市場町805-1 佐藤ビル304
電話 070-3535-9158
Instagram: https://www.instagram.com/cometseminar2023/
めぐる布市出口を広げるプロジェクト2024
〈お問合せ〉
認定特定非営利活動法人 森ノオト
ファクトリー事業部(担当:齋藤)
【この活動は、地球環境基金の助成を受けています】
※3月のめぐる布市お申し込み受付中です。
https://forms.gle/Pfu8EekGCFaGs5Rb7
3月11日(火)-19日(水)
*15日(土)、16日(日)はお休み
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森ノオトが開催するリユースファブリックマーケット「めぐる布市」は、自宅で大切にしまいこまれた布や、使いそびれた手芸用品を、新たな使い手につなぐ期間限定の手芸店です。
全国から届く布や手芸用品を仕分けし、整え、次に必要としてくださる方のもとへとめぐらせる活動をしています。
めぐる布市は、毎月およそ1週間、1日3回、現在は10名ずつ人数を制限し、予約制で開催しています。
お店に並ぶのは、様々な布地を中心に、糸や針、リボンや羊毛、毛糸…..といった手芸用品、まだまだ現役で活躍できるミシンやアイロン、定規、ハサミといった道具類も。
通常のお店のように、なんでもある品揃えとは違いますが、ここでしか出会えないもの、その時にめぐりあえないものがあり、お値段もアウトレット価格で大変お手頃です。
必ずほしいものがあるとは限らないかわりに、ここで出会ったものから何かをつくる、何を作ろうかなと妄想する、そんな時間が至福の時。
まるで宝探しのように心が湧き立つ瞬間が、会場にはたくさんあります。
ぜひ、楽しんでくださいね。
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気づけばもうすぐ春ですね。
お子さんの入園入学だったり、お引越しだったり、新生活が始まる人も多いこの季節。
何か新しいことを始めてみませんか?
春になると新しいことを始めたくなる人も多いはず。
今までやったことのない手芸に挑戦してみるのもよいかもしれません。
めぐる布市には、布だけでなく、さまざまな副資材や道具類も届きます。
裁縫以外にも、編み物、刺しゅう、パッチワークにビーズ細工、織物にレザークラフトなど、手芸にもさまざまな種類がありますが、はじめるのには材料が必要です。
そんなとき、まずは布市で探してみることをオススメします。
資材をお手頃価格で揃えることができるので、何でも気軽に始められますよ!
手しごとは、隙間時間にもできるので、息抜きになったり、無心になれたり。
完成した時の達成感や満足感が大きいのも続けたくなる理由のひとつ。
年度の変わる忙しい時期だからこそ、手を動かすことで、春からの新生活を楽しんでもらえたら嬉しいです。
最近若い世代にも流行っているという編み物。毛糸も編み針も、布市で揃います
パッチワークに使える小さなカットクロスや、キルト用の糸もたくさんありますよ!
韓国の伝統的なパッチワークである「ポジャギ」
めぐる布市に届くたくさんのハギレを使って、ポジャギ風カーテンのオーダー製作をお受けしています。
一枚一枚布をつなぎあわせ、一旦大きな布をパッチワークで作ってからカーテンに仕上げるという、とても手間がかかるものなのですが、
出来上がると、空間に凛とした空気が漂い、なんとも言えない柔らかな揺らぎのようなものが生まれるのです。
この春、カーテンを新調してみませんか?
サイズやはぎの数など、ご希望に合わせてお作りしますので、お気軽にお問い合わせください。
【詳しくはこちら】
https://applique.morinooto.jp/works/pojagi.html
3月の手芸部は「パッチワーク」
どの布を組み合わせるか、考えるのも楽しみのひとつです
今月の部長は、布市のサポートスタッフとしても普段から頼りにしている飯島早苗さん。
布市のお客さまにはパッチワーク好きな方が多いのですが、手芸部で取り上げるのは、意外にも初めてです。
今回は、基本となるパッチワークのパターンを一緒にやっていきます。
風車のような「ピールウィール」と、お花のような「ローズガーデン」
これからパッチワークやってみたい!という方、パッチワーク仲間に出会いたい方、一緒にチクチクしませんか?
………………..
日時:2025年3月18日(火)10:00- 13:00
場所:森ノオウチ1F ※普段布市会場の前にあるおうちです。
定員:6名
参加費:3,300円 ※材料費込み
【詳しくはこちら】
https://applique.morinooto.jp/style/nunoichisyugeibu.html
たまプラーザに出現する年に一度の1日限りの仮想のまち「チッチェーノ・チッタ」は、「子ども市民」として、お仕事体験ができるイベントです。
子どもたちが用意したお店もおとなのお店もたくさんあって、誰でもお買い物や体験をすることができます。
お仕事体験は要予約制ですが、お仕事体験をしない人は、入場無料、予約や受付不要でご参加いただけます。
めぐる布市はリユース手芸店として、布や糸を販売したり、タッセル作りのワークショップを開催予定です。
ぜひ遊びにきてくださいね!
日時:2025年3月8日(土)10:00~15:30
場所:美しが丘公園 多目的広場(たまプラーザ駅北口から徒歩約7分)
【詳しくはこちら】
商品をインスタライブの生配信でご紹介しつつ、お客様とスタッフが直にやり取りしながらオンライン上でお買い物ができる「オンライン布市」。
1時間という限られた時間のなかで、リクエストがあった布やスタッフオススメ布をご紹介しています。
商品には番号札を付けてご紹介するので、購入希望の番号をコメントすることで、購入することができます。
早い者勝ちなので、まるで競りのような争奪戦になることも。
生配信が見られない方は、アーカイブからもご覧いただけます。
ミニオンラインは収録した10分程度の動画を、Instagramの投稿で配信しています。
▶︎今月のオンラインめぐる布市
日時:3月19日(木)12:00~13:00
▶︎ミニオンライン布市
日時:3月9日(日)/ 16日(日)20:00頃配信予定
※参加費は月に一度だけ500円かかります
※月内であれば、他の回のオンライン布市とおまとめできます(取置き料100円)
※1万円以上送料無料
詳しくはInstagram @megurununoichi をご覧ください
オンライン布市を一人でじっくり楽しめるプライベート布市。
1枠45分間、スタッフと直通のLINE電話、またはZOOMで話しながらお買い物をしていただけます。
ゆっくり自分のペースでお買い物を楽しみたい方、お探しの布や資材がたくさんある方は、ぜひプライベート布市をお試しください。
時間いっぱいリクエストにお応えします。
配信のオンライン布市ではご案内できない2階の売り場もご紹介できますよ!
日時:3月18日(火)(14:30~/15:30~)
※3,000円の参加費のほか、購入品の代金と送料が別途かかります
※1万円以上送料無料
ご参加希望の方は、LINE(もしくはnstagramのDM・メール)からお申し込みください。
お問合せもお気軽にどうぞ!
【LINE登録はこちら】
登録後
①お名前
②希望の時間帯(14:30~/15:30~)
③探している商品、詳しく見たい商品など
当日はLINEまたはzoomのビデオ電話でお話し予定です。
【イベント】
●まち活カフェ+
「暮らしの中のアップサイクル」
布市マネージャー斉藤由美子がゲストスピーカーを務めます
カードやハガキを飾るファブリックボードをつくるワークショップも同時開催
場所:青葉区区民活動支援センター(青葉区役所1F)
日時:3月4日(火)10:00~12:00
●アートフォーラムあざみ野
日程:7月24日(金)・25日(土)・26日(日)
【工房開催】
4月18日(金)~ 24日(木)*20日(日)はお休み
5月15日(木)~ 21日(水)*18日(日)はお休み
6月18日(水)~ 24日(火)*22日(日)はお休み
7月14日(月)~ 17日(木)
詳細はホームページやSNSでお知らせします
2025年3月11日(火)- 19日(水)
10:00~11:30/11:30~13:00/13:00~14:30 ※1枠10名
*15日(土)、16日(日)はお休み
*19日最終日は10:00~の回のみ
場所:森ノハナレ 横浜市青葉区鴨志田町818-3 森ノオトオウチ裏
*駐車場は、1枠で2台までです。 お申し込みのタイミングによっては満車表示が反映されていない場合もありますのでご了承ください。
先着順でご案内します。受付返信メールをご確認ください。
【手芸部部活】
「パッチワーク」
日時:3月18日(火)10:00- 13:00
場所:森ノオウチ1F
定員: 6名
参加費:3,300円
※手芸部は駐車場のご用意がありませんのでご了承ください。
※同日布市も参加できます。(別途参加費が必要です)
新着情報は、Instagram @megurununoichiで紹介しています。
申し込みフォームから、希望の時間帯をお選びください。
または、factory@morinooto.jp 宛に、下記の内容を記載の上、メールにてお申し込みください。
・お名前
(同伴者のいる方は全員のお名前、メールアドレス、お子様連れの方はお子様の年齢も添えて)
・電話番号
・駐車場希望の有無
・ご希望の日にちと時間帯
・入場料500円は事前のお支払いとなります。お支払い方法をお選びください。
(クレジットカード/銀行振込)
お電話でも申し込みを受け付けています。
布市申し込み専用電話:080-7531-8704
森ノハナレ(横浜市青葉区鴨志田町818-3)
東急田園都市線・青葉台駅よりバス10分、バス停より徒歩3分
アクセスの詳細はこちらをご覧ください。
*駐車場ご利用の方は、必ず申し込みフォームで駐車場希望にチェックを入れてください。
NPO法人森ノオト ファクトリー事業部
HP:https://applique.morinooto.jp/
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2023年4月から、地球環境基金の助成を受け活動しているめぐる布市「出口を広げるプロジェクト」。
その活動の一環で、昨年より年に2回、他団体への視察を行っています。
今回は、横浜美術大学を訪れました。
テキスタイルデザインコースの授業や学生の作品、先生方のお話を伺い、想像以上に奥深い世界に驚かされました。布に関わる私たちにとって、大きな学びと新たな可能性を感じる視察となりました。
実は、学長の加藤良次先生 には、今年度「出口プロジェクト」のハギレ活用コンテストで審査員をお願いしており、すでにご縁がありました。
その際に打ち合わせで訪れたスタッフが、加藤先生の案内で美大の様子を見学。
「これは、現場のスタッフにもぜひ見てほしい!」
「きっと何かしらアイデアやインスピレーションにつながるはず!」
そう確信し、今回はスタッフ全員での視察となりました。
美大ではどのような学びがあり、どんなふうに布が使われているのか?
そして、私たちが関われることは何か?
そんな視点を持って訪れてみると、想像以上の発見が待っていました。
横浜美術大学の テキスタイルデザインコース では、「布をつくる」ことそのものがゴール。
私たちが普段目にする布は、すでに商品化されたものですが、ここでは 「染める」「織る」「編む」といった工程そのものを学びます。
これは、テキスタイルの元になる実際に学生さんが描いた絵
手でプリントを施し、生地として生まれ変わっていました
布や手芸が好きなスタッフたち。
その布を作り出すという工程には興味津々でした。
▶︎染色技法「抜染」
すでに色が入っている布の一部の色を抜くことで、新たな模様を生み出す技法
▶︎スクリーンプリント vs インクジェット
従来のスクリーンプリントに加え、2011年の大学設立時には 1メートル20幅のプリントが可能なインクジェット機 も導入。
しかし、インク代やメンテナンス費用が高額なため、現在は外注が主流に。
▶︎学生たちのデザイン手法
さまざまな技法が組み合わされ、学生ごとに個性が光る作品が生み出されていました。
キャンパス内には、色とりどりの 布地、パターン、織物、染め作品 が並んでいました。
どれも素敵な作品ばかりなのですが、驚いたのは 「卒業制作がそのまま放置され、最終的には廃棄されることがある」という事実。
「これだけのクオリティの布が、使われずに終わるなんてもったいない!」
そこで浮かんできたのは、学生作品の販売や循環の仕組みをつくることができないか、ということ。
布市などで販売する機会を作れば、学生たちも 「売れるデザインとは?」 を考えるきっかけに
なるのではないか。
また、布市で動かないまま眠っている布を学生たちに提供し、新たな作品を生み出してもらうこともできそう。
テーマを決めて素材を提供すれば、授業の一環としても活用できるのでは?
さまざまな可能性を感じました。
先生方のお話の中で、こんな話題が出ました。
「最近の学生は美術館に行かないし、服にもお金をかけたがらない。旅にも出ないし、スマホで完結することが多い。」
さらに、制作する際も 「より良い布を選ぶ」 より 「安い材料で済ませる」 傾向があるとか。
これはコスト面だけでなく、時間や手間のかからない選択をする「タイパ重視」の考え方 にも関係しているそうです。
とはいえ、先生方はそうした学生たちに対しても柔軟に接し、創作の楽しさを伝えようとしているのが印象的でした。
普段、現場のスタッフは 日々終わりのない作業 に追われがち。
そのため、今回の視察は、スタッフにとっても 新しい視点を得る貴重な機会 となりました。
「こういう活用ができるかも?」
「このやり方、布市にも取り入れられそう!」
そんな気づきやアイデアが次々と浮かび、改めて 直接現場を見ることの大切さを実感しました。
美大の学生が考案した、古着を再利用したオリジナルファブリック。
ネットに布を押し込み中に生地を入れることで、クッション性のあるポコポコとした形になることから「ポコス」と名付けられました。
テキスタイル制作の技法の一つ、タフティング。主にカーペットやラグを製作するために使われますが、
ここでは、絵画のように作り込んでいる学生も。
今回の視察で、横浜美術大学とのコラボレーションの可能性がいくつも見えてきました。
加藤先生の「布と色」についての話はとても面白く、トークイベントとして開催したら多くの人が興味を持ちそう!
布市に学生たちを招待し、販売体験をしてもらう企画。価格設定などのルールを整えれば、実現可能性は高い。
倉庫で動かない布を学生に提供し、新たな作品づくりにつなげる。特に、抜染用の布は提供できる可能性大。
ポコスやタフティングのワークショップを、美大の学生と一緒に開催するのも楽しそう。
アートイベントの一環として、美大生と一緒にシンボル的なオブジェを作る企画も考えられる。
スタッフみんなの頭の中が妄想でいっぱいです。
そんなふうに、ただの思いつきだったコラボレーションが、一気に現実になることになりました。
今年の夏、2025年7月26日から29日までの4日間、アートフォーラム横浜で加藤学長による布のトークショーや、横浜美術大学とのコラボイベントが実現します。
今回の視察を通じて、美大と私たちの活動には多くの共通点があり、新しい可能性を感じることができました。
何より、歩いて10分ほどの距離にあるというこの立地。
「布」という共通点を持つ私たちだからこそ生まれる、新しいコラボレーションがどのように広がっていくのか…。
今後の展開がますます楽しみです!
横浜美術大学
【この活動は、地球環境基金の助成を受けています】