布の循環量を増やし、リユース品を活用する人を増やすため、2023年から地球環境基金の助成を受け始まった「めぐる布市」出口を広げるプロジェクト。
2年目となる2024年度は、モニター団体による活用だけではなく、「めぐるなかま」として福祉作業所や若者支援団体との作業連携も進み、より多くの人が参加できる仕組みづくりにチャレンジしました。
また、ハギレや素材を使うコンテストを行なったことで、新しいアイデアの発見にもつながりました。
また今年度も引き続きモニター募集を行い、地域の福祉団体や、居場所づくりのコミュニティなど、新規で15団体にご参加いただきました。
この1年を振り返り、2024年度の活動を報告するとともに、ご協力いただいた団体をご紹介したいと思います。
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たくさん届くものの、余りがちな「ファスナー」「ボタン」「とろみ生地」を題材に、素材の活用アイデアコンテストを行いました。
審査員は横浜美術大学学長 加藤良次さんと、洋服作家のMayMe 伊藤みちよさん。
ノミネート作品は、9月に開催されためぐる布市@象の鼻テラスで展示、最終日には審査員のお二人をお招きして、受賞作品発表を行いました。
応募総数68作品(一般62作品/キッズ6作品)
https://www.instagram.com/meguru_creative/
さまざまな形でめぐる布市に関わる人が増え、布が色々な人をつなぐ役割になり、そこにさらに仕事が生まれたら、という思いから、「ちいきでつながる めぐるなかま」がはじまりました。
めぐる布市で販売する新商品を共に作るべく、どんなことができるだろうと福祉作業所の方々や若者支援団体と話し合いを重ね、お仕事の依頼へとつながり、新たな一歩を踏み出しました。
ハギレカットをお仕事として依頼し、50枚ずつ束にしたパッチワーク用のカット布として商品化しました。
さらに、作業所のメンバーが制作した作品をめぐる布市で委託販売することにもつながりました。
WEBSHOPでの販売を視野に入れ、布や端材をセットにした「つめつめセット」の制作を依頼し、商品制作から写真撮影まで一連の作業を委託しました。
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小学生になってもいつでも帰って来られる場所を。
横浜市都筑区にある「ちっくんぱっくん」は、卒園した小学生たちが参加できる放課後クラブです。
ちっくんはいろんなものを作ること、ぱっくんはおいしいものを食べること。
子どもたちが自分の好きを見つけながら自由に創作するちっくん活動の中で、「紙皿でんでん」を作りました。
リボンやレースをふんだんに使って、思い思いのでんでん太鼓ができました。
福岡市早良区で、「身近な自然を知ること、自然をテーマにした作品をつくることで自分を自由に表すこと、地域の親子が助け合って育ち合うこと」を目指し、月に一度、幼児から小学生まで12人の子どもたちと親で活動しています。
届いたさまざまな資材は、毎年参加している公民館文化祭での展示作品に活用され、大きな布の中にみんなの作品が一つになり、ダイナミックに表現されました。
使いきれなかった資材は、別のワークショップに使ったり、子どもたちが欲しい素材を持ち帰ったり、洋裁クラブの方々に持ち帰ってもらうなどして、すべて分け切ったそうです。
https://applique.morinooto.jp/project/shizenart.html
南河内プラッツは、大阪府南部の河内長野市で、“ひきこもりの相談と居場所”の支援拠点として活動しています。
親の会は、南河内プラッツに個別面談に来ていたり、お子さんが「居場所」に通っていたり、親御さん同士のつながりを持ちたい、誰かに話を聞いてほしいなどの親御さんによる会。
高齢者施設の壁面装飾や、引きこもり当事者の個性に沿った経験としての作品作りを経て販売に活路を見出し、そこから繋がる新たな引きこもりの方や支援者に繋げてみたいとの思いから、出口プロジェクトにご参加くださいました。
お渡しした素材は、建物内を飾るガーランドや、壁面装飾などの製作に活用されました。
https://applique.morinooto.jp/project/plats.html
毎月1回、「手作りボランティア」の活動として認知症マフを作成しています。
事業予算のないボランティア活動のため、無料で多くの材料を譲り受けることができて、大変助かったそうです。
完成した認知症マフは、地域で必要とされる方々にお渡しし、大変喜んでいただけたとのこと。
毛糸や布など幅広い材料を活用し、参加者の皆さんが創意工夫を凝らしながら、楽しんで作品作りに取り組めました。
COMETセミナーは、こどもたちが「自分のペースで自分らしく学ぶ」ことを大切にしている横浜市緑区の不登校支援塾。
これまでは手芸をあまりすることがなく、雑多なものがたくさん届いて初めは戸惑ったそう。
そこで、どんな使い方ができるのか、アイデアなどをお話しする時間をいただきました。
その後、寄付の布や毛糸を使って、オーナメントや、ガーランド、ラッピングなど、こどもたちは楽しく素敵な作品をたくさん作ることができたとのご報告が。
社会の巡りを体感し、これからの生活でも活かしていける時間となりました。
https://applique.morinooto.jp/project/comet.html
横浜市戸塚区で赤ちゃんから高齢者まで楽しく集う場として、地域に場を開いています。
受け取った素材は、イベント時に飾る万国旗や、音楽隊のフラッグ、展示する際のテーブルクロスやお昼寝用のブランケットなど、あらゆるものに形を変え、大活躍したそうです。
「今回『布』という素材が引き出してくれる子どもたちの想像力が、大人の想像を遥かに越えていて、素晴らしい作品と体験が出来ました。」
と嬉しいご報告をいただきました。
大分県で2ヶ月に1回開催している「手づくり市」。
ものづくりが得意な参加メンバーが、届いた布や資材を活用して洋服や小物を制作して販売するマルシェや、子ども向けの手づくり教室などを開催しています。
その中で、特別支援学校に通学する子どもさんのお母さんから、子ども達にもさせたいと要望があり、今後新たな手づくり教室を開催することになったそうです。
「高齢化率も高く、人口も減少している地域なので、手づくり市で地域を盛り上げたい。」という思いで開催している手づくり市は、人が集まり笑顔が生まれる場、温もりをつなぐ交流の拠点として、着実に地域に根付いているようです。
主婦10名で構成され、埼玉を中心に全国10か所の乳児院や母子支援施設、貧困家庭の方へ、手作りのベビースタイや入学グッズなどを寄付しています。
入学グッズに使用する布は実費で購入されていますが、お子さんが喜ぶ柄の素材や、紐をモニターとして譲り受け、入学グッズの体育着や手提げ袋に活用してくださいました。
こんなにもたくさんの布が行き場を無くして捨てられるしかないという事実を知り、今まで以上に布を大切に使おうと思うようになったそうです。
https://applique.morinooto.jp/project/kasumiso.html
横浜市北部エリアを拠点に、日本で暮らす外国人の子育て支援や多文化交流事業の活動をおこなっています。
2022年ごろから自主グループとして、手芸好きのメンバーが集まって、手仕事を楽しむ活動がスタートしました。
お渡しした和物の生地は巾着やファブリックパネルに、フェルトや刺繍糸はワークショップに活用されたそうです。
「自分の国にはない色合いの布にふれて、喜びを感じました。リユース品であっても、質もデザイン性も高い日本の布を使えることがうれしいです。予算的に自分たちで買うことができないものを、無償で提供してもらえることに感謝しています。」と喜ばしい報告も。
https://applique.morinooto.jp/project/sharing-caring-culture.html
UPBEATDAY(アップビートデイ)は、子どもや若者が主体となるファッションショーを開催したいという思いから結成された横浜市泉区を拠点とする団体です。
廃棄される洋服や布をいリメイクして、子どもや若者が輝けるショーにしたいと、ご応募いただきました。
譲り受けたカーテンレースや手芸用品、廃棄予定だったドレスを再利用し、不登校経験のある子どもたちがそれぞれの想いを抱きながら制作やモデルを担当。
無事にサステナブルファッションショーを開催することができ、子どもたちの心がとても動いていくのを感じたそうです。
https://applique.morinooto.jp/project/upbeatday.html
ゆずりあい会は、「子育て世代の方々がより元気よく、より楽しく生活できる未来を、みなさんと一緒に作っていきたい」との思いで活動を始めた、横浜市緑区長津田在住のママと子どもたちのボランティアグループです。
年に数回、子ども服や子育てグッズの無料交換会を開催しています。
お渡しした手芸素材は、交換会の装飾品として、コサージュやツリー型のオーナメントなどの製作に活用。
これからは布を使って、一緒に何かを作る交流の場、ワークショップなどに広げていきたいそうです。
https://applique.morinooto.jp/project/yuzuriaikai.html
青葉区を中心とした子どもの発達に不安をもつ保護者の方々の自主運営団体です。
夏と冬に素材を活用した体験会を開きました。
夏には手織りのミニ織り機で手織り体験、冬にはハギレを使ったリース作りを開催。
小さなハギレでもきれいにカットして並べるとまた新たな使い道が広がるのだなと再発見できたそうです。
普段ゆっくりとお話する機会のもてない未就学児から中学・高校生のママたちが集まりいろいろな情報交換や親睦が深められる機会になりました。
横浜市旭区の就労継続支援B型施設である夏の空さん。
普段使うことがなかったリボンやレースなど、さまざまな素材が揃っていたことで、職員の方々も、今まで以上に新たな製品づくりなどに挑戦するきっかけになったそうです。
ぬいぐるみは、利用者の絵を元に本体を作り、目や鼻をつけて仕上げました。
レースはふんだんに使ってポーチ作りに。
バザーではいつも以上に季節感のある演出ができたと、喜ばれていました。
素材があることで、活動が広がっていくことを改めて実感しました。
横浜市青葉区内で障がいのある方が通う福祉作業所を運営し、障害福祉サービスとして日中支援事業を行っている団体です。
たくさんの刺繍糸、ミシン糸、布を譲り受けたことで、大幅に選択肢が増えたそうです。
これまでは限られた予算の中での活動でしたが、机の上に並ぶ色とりどりの素材に今まで以上にとてもワクワクした気持ちになり、利用者さんがどのようにそれを活かしてくれるかとても楽しみになったとのこと。
使ったことのなかった素材を手にする事で色々な発想が湧いてきて、これからの新しい制作に繋がっていく可能性を感じました。
https://applique.morinooto.jp/project/raicyo.html
犬や猫の里親探し、不妊去勢手術の助成金制度、学校訪問、ペット防災など、人にも動物にも地球にもやさしい社会を目指して様々な活動をしている団体です。
工房に毎月のように来てくださっているお客様とのご縁でつながり、モニター参加いただきました。
布や道具は、猫グッズとして生まれ変わり、マルシェなどで猫たちや猫好きさんの元へ。
これまでは製作者には、材料費のみのお支払いで、作業代はボランティアだったそうですが、出口プロジェクトのモニターになったことで、売上を犬猫たちを助けるための活動費にすることができたそうです。
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寄付のお申し出が増え続ける一方で、保管スペースや人員・資金が限られていることから、受け入れを制限せざるを得ない状況が続いていましたが、
2023年から「地球環境基金の助成を受け、「出口を広げるプロジェクト」がはじまり、
2024年度は、「ハギレ活用コンテスト」と「めぐるなかま」という二つの新たな活動がスタート、さらに新規のモニター数も昨年度より2団体増え、昨年度からのリピーター団体も3団体となり、より循環量を増やすという目標も達成できました。
届いたたくさんの素材をどう活かしたらよいのか、悩む姿も見られましたが、一緒に考え思いを共有したことで、新たな発想がつながることもありました。
また、福岡、大分、大阪、新潟といった横浜から遠く離れた地域からもモニター参加があったことや、日本に住む外国人の方々にもめぐる布市の活動が伝わり始めたことで、昨年度よりもひとまわり大きく広がっていっているような感覚がありました。
そして何よりモニターの皆さんから届くわくわくするような嬉しい活動報告が、このプロジェクトをより意義のあるものとして支えてくれたと思います。
この1年でますますめぐる布市の輪は広がり続け、姿や形を変えながらどこまでもめぐっていくことを実感した2年目となりました。
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今年はこの2団体の視察に行きました。
次の世代につないでいきたいモノと文化を掬いあげ、再構築 これからの景色をデザインする リビルディングセンターへ。
https://applique.morinooto.jp/project/rebuildingcenter.html
横浜美術大学へ行ってきました! ~布の可能性を探る視察
https://applique.morinooto.jp/project/yokohamaart.html
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〈お問合せ〉
認定特定非営利活動法人 森ノオト
ファクトリー事業部(担当:齋藤)
【この活動は、地球環境基金の助成を受けています】